日本の評価制度相対評価で行われる日本企業の評価制度は、もはや限界を迎えています Photo:PIXTA

日本企業で長らく取り入れられてきた評価制度が今、「限界を迎えている」といわれています。変化の時代、そしてグローバルな時代を迎えて、従業員の成果や、価値をフェアに評価することができる、「ノーレイティング」という新たな評価制度が、マイクロソフトなど米国企業を中心に広まっているのです。社員のモチベーションを高める評価制度のあり方とはどのようなものなのでしょうか。『人事こそ最強の経営戦略』の著者であり人事戦略コンサルティングの第一人者・南和気氏が、今回は、実態がほとんど知られていないノーレイティングの本質に迫ります。

「成果主義は日本企業の文化に合わない」という嘘

 現在、日本企業で最も多く導入されている評価制度といえば、「目標管理制度(Management by Objectives)」です。元々は経済理論から応用されて考えられた評価制度で、従業員がそれぞれ自分の目標を設定し、上司と合意形成を行った上で、目標達成に向けて業務を行い、年度末や、半期末にその評価を行うというものです。

 目標管理制度が広まる以前、かつての日本企業では、個人目標というものはなく、部門や企業の成績、また上司による査定という形で、明確な基準がなく上司の主観によって評価が決まるものでした。

 2000年代になってバブルが終わり、個人の成果によって報酬を変えて人件費を抑えたいという風潮から、「成果主義」という言葉が世間をにぎわせました。そして、「成果主義=目標管理」という誤った理解をした企業によって、一時期、「目標管理制度は日本企業の文化になじまないのではないか」という声も上がりました。

 しかし、これは目標管理制度の導入目的を誤ったために起きたことです。個人の成果や業務の結果につながる能力や経験の向上は、適切な目標があって初めて測ることができるようになります。

 結果を出していても出していなくても、評価が同じでは、組織全体のモチベーションとパフォーマンスは上がりません。一方で、個人の目標と組織の目標の両方を合わせて設定することも重要です。

 かつての誤った成果主義では、個人の目標だけにこだわってしまったため、チームで協力することや助け合う日本企業の良さが失われるように思われました。

 しかし、目標管理制度とは、あくまで設定された目標の達成度によって評価されるべきものです。目標の中に、チームや組織の目標を加えることでお互いに助け合って組織の目標を達成することができます。