物流ドライバー不足の陰で
タクシーやバスの運転手は仕事がない

 この人手不足がいかに深刻かというのは、この発表と同時に、米国、カナダ、欧州の従業員の時給引き上げを宣言していることからもうかがえる。

「米国では最低時給を15ドル(1590円)としていたが、4月末までは2ドル増やして17ドルに引き上げるという」(同上)

「人手が足りない」と叫びながらも低賃金労働者を求める日本と違って、「本当の人手不足」なので経済原理に基づいて、賃上げが始まっているのだ。

 これらを踏まえると、「ウイルスに強い社会」のひとつの条件が見えてくる。それは、ネット通販が緊急事態下でもインフラとしてしっかり機能するように、平時から人員や労働環境などの体制が整えられた社会である。

 なんてことを言うと、「そんなのは日本には夢のまた夢だ」と捨て鉢になってしまう人も多いことだろう。ご存じのように、日本では数年前に「宅配クライシス」なんていわれたほどの深刻なドライバー不足が問題になっている。これは今も継続中で、高齢ドライバーが一気に退職すると、物流インフラが崩壊するという人もいる。

 これがあながち荒唐無稽な話ではないことは、今回のトイレットペーパーパニックも証明している。実はメーカー側には山ほどトイレットペーパーの在庫があった。しかし、店頭ではスッカラカンになったのは、急激に増えた注文に対応するトラックドライバーが圧倒的に少なかったからだともいわれている。つまり、トイレットペーパーパニックである以前に、物流パニックだったというわけだ。

 こんなおサムい状況の日本で、「ネット通販を社会インフラにする」なんて大それたことができるわけがない。そう思うかもしれないが、筆者は今回のパニックによって、その方向性はある程度固まったのではないかと思っている。

 それは「ウイルスパニックで仕事がなくなる人」の活用だ。

 今、日本中で新型コロナの影響で「仕事がない」という人たちがたくさんいらっしゃる。そういう労働力を、ウイルス発生時に必要不可欠なインフラ、つまりネット通販へと流用できるようにしておくのだ。

 例えば、タクシーや観光バスだ。

 タクシーはイベント中止や自粛ムードで、夜の繁華街が閑散としていることで利用者が激減していることに加えて、運転手が感染していた例も報道されたことで、売り上げが落ち込んでいる。個人タクシーの方などは生活ができないほどの苦境に陥っている。また、観光バスも外国人観光客のツアーがないので売り上げの見通しが全く立たず、ドライバーに給料も払えない会社もあるという。

 そんな風に「仕事がない」と悲鳴を上げるドライバーが山ほどいる一方で、アマゾンなどのネット通販や物流の現場では「ドライバーがいない」と悲鳴を上げている。ここをうまく繋げられる仕組みをつくれば、日本社会にとって非常に大きなメリットになるのではないか。