「あなたの場合、つらくはないとはいえ、血痰もあるのでね、お薬をしばらく飲んでいただきます。期間は、2~3年間ぐらいかな。軽症の場合は、治療をせずに様子をみるだけの場合もありますが。

 菌が完全に消えることはほぼないと考えてください。治療終了後も再発しないか定期的に胸部エックス線検査をします。再発すれば治療を再開します。

 それから重要なのは、生活環境の改善です。原因菌がいるお風呂場や台所、シャワーヘッドは、換気をしっかり行った上できちんと掃除してください。それから免疫力が下がらないよう、食事と運動にも気を配ってくださいね」

完全には治らない病気
治療には家族の協力がほしい

 有華さんは薬をもらって帰路に就いた。肺がんでなかったことはうれしかったが、完全には治せない病気がみつかってしまったのだから気持ちは沈む。それに病気が本当に進行すると、「空洞」といって肺に穴が開き、呼吸困難に陥ったり、入院・手術が必要になることもあるらしい。決して侮ることはできない病気のようだ。

 ネットを検索している中で、「非結核性抗酸菌症」のコミュニティも発見し、さっそく登録してみた。投稿によるとこの病気は、かつては非定型抗酸菌症と呼ばれていたことがあり、初期診断では結核と診断されることが多かったこともわかった。ただ、現在は、検査法も知名度も向上し、結核と間違われることはなくなったという。

「手術を受け、術後の痛みに苦しんでいる人」「手術を勧められたものの決心がつかず、セカンドオピニオンを考えている人」「手術は断り、漢方薬を飲んだらよく効いて、症状が改善した人」「数年前に手術を受け、今はすっかり元通りの生活が送れるまでに回復した人」等々、病気の先輩の話はすごく参考になる。

 面白かったのは、「私は神経質なほどお風呂掃除を入念にしているのに、夫はぜんぜん真面目にやってくれない。肺マック症についても全然勉強していないみたい」という書き込みだった。

(芳樹さんはどうかな。ちゃんと心配してくれるかな。でも、心配され過ぎるのも、本当の重病人になったみたいで暗くなっちゃうし、難しいわよね)

 少しずつ気持ちが落ち着いてくる。治療は長丁場になりそうだが、ずっと元気でいるためには油断大敵。万が一ということを忘れずに、日々の治療に集中するしかない。

「頑張るしかないわね」

 有華さんは覚悟を決めて歩き出した。

※本稿は実際の事例・症例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため患者や家族などの個人名は伏せており、人物像や状況の変更などを施しています。