「何となく体に良さそう」というイメージで食品やサプリを摂取しても効果は薄いどころか、下手をしたら害にすらなる。「カラダに入れるものは薬でも健康食品でも、まず論文で調べてみよう」と語る東大病院医師が解説する驚きの事実とは?

 経営者やマーケターの取材を行う記者・ナツメの元に「訴えたいことがある!」とメールが来た。差出人は、記者の親友の医師・稲島司氏(東京大学医学部附属病院、地域医療連携部・循環器内科)。

イメージ先行でサプリや食品を選んでいないか?論文を丁寧に読み解くことで、本当に体にいいものが見えてくる

 彼は論文を読むのを日課にしていて、医学情報のみならず、サプリメントや食品に至るまで、あらゆるデータに精通している。彼は「なぜビジネスや投資では現場などで一次情報を拾って、データを元に判断するのに、自分のカラダに関してはそうしないのか」と話し出した。

 稲島 先日の検査はお疲れ様でした。ナツメさんは血液検査その他の結果、健康と言えます。ただし前にも言いましたが少々太り気味です。その点は節制していますか?

夏目 ええ、私なりに食事に注意してまして…。

稲島 その「食事に注意し」が気になってたんです。健康に関してもビジネスや取材同様、「一次情報」と客観的な「数字」を大切にしてますか?

コーヒーは糖尿病リスクや死亡率を減らす!
「悪者」イメージを覆す驚愕のデータ

稲島 例えば先日、コーヒーは体に悪そうだから控え、毎日トマトジュースを飲んでいる、と言っていましたよね。ところがコーヒーは飲んだ方が良いというデータもあるんです。

夏目 えっ!?

稲島 図は、2014年に発表された、コーヒーの摂取量と糖尿病発症率を調べた28の調査をまとめたものです。100万人以上の調査結果が含まれています。

Diabetes Care. 2014 Feb;37(2):569-86

夏目 英語じゃないですか。ボクは楽天の社員じゃないからニガテですよ?

稲島 下の「Cups of coffee」くらいは読めるでしょ! 横軸は右に行くほど、コーヒーを毎日たくさん飲んでるって意味です。グラフの縦軸は、糖尿病の発症率を示します。一番上の「1」は平均と同じ、その下の「.8」や「.6」は「0.8」、「0.6」という意味です。そして、コーヒーをたくさん飲むほど糖尿病の発症率が右肩下がりになっていることがわかりますよね。毎日10杯以上飲むと、発症率が60%にまで低くなっているのがわかります。ただし1日10杯というのはかなり多いですよね。3~5杯くらいが最も効果的、という結果が出た論文もあります。ちなみに5月には日本でもコーヒーを飲む人では死亡率が低かったという発表がありました。(Am J Clin Nutr. 2015 May;101(5):1029-37)