米マイクロソフトが、日本の大学・研究機関との連携強化を目的とする新たなプログラムを立ち上げた。その名も、「富士山プラン」。共同研究から人材育成、学術交流そしてカリキュラム開発まで掲げ、高性能コンピューティングやロボット工学など日本が得意とする分野での“知”の創出に挑む。同プランを牽引するのは、自身が著名な科学者であるマイクロソフトリサーチ(MSR)のトニー・ヘイ副社長だ。科学技術の発展にITを駆使する「eサイエンス」の第一人者としても世界的に知られる同氏に、産学連携による“知”の創造術と、日本の科学技術力に対する評価を聞いた。事業仕分け人必読の内容である。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン副編集長、麻生祐司)

仕分け人必読!マイクロソフト幹部が語る<br />「日本の科学技術は宝の山」
トニー・ヘイ(Tony Hey)
マイクロソフトのエクスターナルリサーチ担当コーポレートバイスプレジデント。世界各地の大学・研究機関との共同研究戦略およびテクニカルコンピューティング戦略を統括する立場にある。自身、ハイパフォーマンスコンピューティングの世界で著名な研究者であり、2001年からは、英国政府による「eサイエンス・イニシアティブ」のディレクターを務めている。マイクロソフトに入社する以前は、サウサンプトン大学のエレクトロニクス・コンピュータサイエンス学部長を務めていた。

―あなたは、マイクロソフトリサーチ(MRS)の幹部である以前に、eサイエンスの分野で世界的に著名な人物だ。MSRではどのようなミッションを帯びているのか。

 その問いに答えるためには、まず大きく三つに分かれるMSR自体のミッションを知ってもらう必要がある。

 第一に、全ての研究においてその分野の最先端の領域を手がけ追求・拡充していくこと。第二に、革新的な技術を速やかにマイクロソフトの製品に技術移転すること。そして最後にマイクロソフトの製品そしてマイクロソフト自体の未来を確実なものにすることだ。

 私の役目は、端的に言えば、これらのミッションの実現に向けて、サイエンスの世界との架け橋となることである。

 そもそもマイクロソフトの製品やサービスは、ビジネスや消費者を支援するように最適化されているが、科学のプロセスを支援するようには仕向けられていない。

 「企業なのだから、それでいいはず」との議論もあろうが、マイクロソフトの考え方は違う。なぜなら、学術界や研究者のコミュニティこそ、明日のビジネスコミュニティであることを知っているからだ。

 私のように、30年以上に渡りアカデミアの世界に実際に身を置いていた人間を、マイクロソフトがヘッドハントした理由がそこにある。