頭の悪い人は「論破」に時間や労力を割いてしまう。じゃあ、頭のいい人はどうするのか。
次々と新たなビジネスを仕掛ける稀代の起業家、佐藤航陽氏。数々の成功者に接し、自らの体験も体系化し、「これからどう生きるか?」を徹底的に考察した超・期待作『ゆるストイック』を上梓した。
コロナ後の生き方として重要なキーワードは、「ストイック」と「ゆるさ」。令和のヒーローたち(大谷翔平、井上尚弥、藤井聡太…)は、なぜストイックに自分に向き合い続けるのか。
『ゆるストイック』では、新しい時代に突入しつつある今、「どのように日常を過ごしていくべきか」を言語化し、「私自身が深掘りし、自分なりにスッキリ整理できたプロセスを、読者のみなさんに共有したいと思っています」と語っている。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「泡」の中で生きる人類
人々は、自分が見ているものが「唯一の真実」であると錯覚しています。
「自分が感じていることは、他の人も感じているはずだ」
と信じてやまないでしょう。
これにより、自分のSNSのタイムラインや生活圏で見かけない存在を「自分とは異質の存在」として扱い、時には「存在しない」かのように無視してしまいがちになります。
そのような態度が、さらなる「分断」や「摩擦」を引き起こす原因となっています。
皮肉にも、政治家や経営者であっても同じ状況です。
本来であれば多くのことを学び、多様な人々と接する機会を持つべきリーダー層にもかかわらず、自分が見たいものの「泡」に閉じ込められている。
そのワナに陥っているのです。
それぞれの「正義」
こうしたリーダーたちが、自分の属するコミュニティや価値観から出られないことで、彼らが持つべき広い視野が失われ、時には社会の分断をさらに深める結果を生むのです。
この連載でも述べているように、「35歳までに戦略を講ずる」「新しいテクノロジーを受け入れる」「新しい挑戦を習慣化する」という対処法をおこなうことが求められます。
そうでないと、普通に日常を生きていながら「泡」の影響を回避することは、非常に難しいと言えるでしょう。
もはや世界中がそれぞれの「泡」の中に閉じ込められており、私たちはそれを前提として行動する必要がある時代に突入しています。
唯一の絶対的な真実や普遍的な正しさがあるとは限らず、立場や視点が違えば、それぞれの側にそれぞれの「真実」や「正義」が存在する。
そうした世界の認識が必要です。
人類は、「唯一絶対の正しさ」を求める時代から「複数の多様な正しさ」を前提とする新しいフェーズに差し掛かっています。
「他者」を受け入れよう
この時代において、自分と異なる意見や価値観を持つ人を見下したり、攻撃したりするような姿勢は、やがて手痛いしっぺ返しを食らう可能性が高くなっています。
そして、自分と相手のどちらが正しいのか「論破」に時間や労力を割いて疲弊してしまっている人と、黙々と自分の人生に集中している「ゆるストイック」な人では、差がついてしまうのは明らかです。
それなのに、頭の悪い人は「論破」に時間をかけてしまう。
それぞれの立場での「正しさ」を尊重し合い、他者の考えを受け入れる「ゆるさ」を持つこと。それが、頭のいい戦略なのです。
それこそが、今後の時代で成功するために不可欠な要素であることを、私たちは深く理解していかなければなりません。
株式会社スペースデータ 代表取締役社長
1986年、福島県生まれ。早稲田大学在学中の2007年にIT企業を設立し、代表取締役に就任。ビッグデータ解析やオンライン決済の事業を立ち上げ、世界8ヵ国に展開する。2015年に20代で東証マザーズに上場。その後、2017年に宇宙開発を目的に株式会社スペースデータを創業。コロナ禍前にSNSから姿を消し、仮想現実と宇宙開発の専門家になる。今は、宇宙ステーションやロボット開発に携わり、JAXAや国連と協働している。米経済誌「Forbes」の30歳未満のアジアを代表する30人(Forbes 30 Under 30 Asia)に選出される。最新刊『ゆるストイック』(ダイヤモンド社)を上梓した。
また、新しくYouTubeチャンネル「佐藤航陽の宇宙会議」https://youtube.com/@ka2aki86 をスタートさせた。