劇団では、毎年仙台公演があるらしく、3人の話から、仙台の劇場の人、打ち上げの居酒屋さんなどの心当たり10人ぐらいがリストアップされました。私はそれぞれに、「実は佐々木君が急に失踪して、お金を引き落とした場所が仙台でした。劇団員全員で心配しています。警察にも捜索願を出していますので、もしも連絡などがあったらこちらにご連絡ください。これ以上大事にはできません」と伝えてもらいました。

 このように伝えることで、こちらはかくまっていた人を責めるつもりはありません、佐々木君のことが心配なんです、ということが伝えられます。そうすると、かくまっていた人も東京に連絡するよう佐々木君を促してくれます。私の予想は的中して、次の日には立川さんに佐々木君から連絡があり、立川さんと私で仙台まで迎えに行きました。

探偵が2人の関係を
聞かない理由

 待ち合わせ場所に着くと、私の存在を忘れて立川さんと佐々木君は抱き合って泣いていました。こういう時は、本当に人助けができてよかったと思う瞬間です。佐々木君と実際会うと写真の印象よりも痩せこけていました。

 立川さんの判断で佐々木君は1度実家でゆっくりして、半年後に劇団の脚本家として戻ってきたみたいです。京本さんは立川さんと佐々木君の関係は知らないので、以前にもまして佐々木君に優しく接しているみたいです。

 現在の立川さんと佐々木君の関係は誰にも分かりません。なぜなら探偵は依頼以外のことは何も質問しないからです。

「若い脚本家の人生の壁」そして「立場ある2人の越えてはいけない境界線」――点と点が線になるお話でした。

※本稿は実際の事例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため個人名は全て仮名とし、一部を脚色しています。