世界中に新型コロナウイルスの感染が拡大する中、感染のピークを過ぎた中国では、医療支援のためにイタリアなど他国に医療チームを派遣し始めている。これには、人道的支援以外にも、別の大きな目的があると考えられる。医師(日本内科学会総合内科専門医)であり、かつビジネススクールで医療経営や医療ツーリズムを教えているという立場の筆者が、「医療ビジネス」という視点で、現在の中国政府の状況や狙いを考察してみた。(中央大学大学院戦略経営研究科教授、医師 真野俊樹)
感染のピークが過ぎ他国の
支援のために医師団を派遣する中国
米国の新型コロナウイルスの感染者数が3月26日、中国を上回り、世界最多となった。一方、中国では感染のピークが過ぎ、落ち着き始めたといわれる。
中国政府はあまり公にはしていないが、中国の医療キャパシティから考えて武漢などの感染がひどかったエリアでは、確実に医療崩壊が起きていたようだ。多くの患者が死に至ったことは想像に難くない。
現在、中国にある工場などが続々と稼働を再開していることから考えれば、中国において新型コロナによる感染はピークを過ぎたことは間違いないと考えられる。
政府が中央集権的な措置で、強制的に都市を封鎖したり、個人情報を管理するなどして強引に感染を食い止めた格好である。