メーカーに限らず多様な業界で
「デザインの権利保護」が重要に

 こんなに苦労するなら、リリース前から意匠権の出願・登録をしておけばよかったのではないか、と思うかもしれない。しかし、意匠出願・登録には時間とお金もかかるため、リリースをして市場の反応を見てから、意匠出願・登録を考えたい企業も少なくないはずだ。

 出願にあたっては、まず、出願の代理人となる弁理士や弁護士に相談し、意匠登録するものの図面を用意する。出願までにかかるのは数週間程度ではあるものの、特許庁での審査などに半年~7、8ヵ月ほどかかるため、ゆとりを持つなら準備から登録までに1年くらいを見たほうがいい。

 かかる費用としては、図面の作成費に5万円ほど、弁理士や弁護士に支払う代理人費用が8万円ほど、そして出願時に特許庁に納める意匠登録出願時印紙代は1万6000円、登録後は毎年意匠登録料として1年~3年までは毎年8500円、4年~25年までは毎年1万6900円を支払うことになる。登録する意匠の数が増えるほど、金額はかさんでいく。

 しかし、意匠登録には、デザインの独占的使用を図り、第三者による無断使用を防止するといった意義がある。病気の予防と同じように、権利侵害を予防するための意匠出願・登録は大変そうにも思えるが、しておいたほうが、第三者による無断使用のリスクを低減できるなどのメリットを期待できる。実際に意匠出願・登録をするかどうかについては、「自社のデザイン戦略や予算を前提としつつ、当該デザインの重要性、現在及び将来の使用状況、他社による模倣の可能性、模倣された場合の被害の程度などを踏まえて検討するといいだろう」(岡本弁護士)。

 一方で、これからは自らが「意匠権を侵害しない」という視点を持つことも重要だ。これまではサイトデザインの類似性についてクレームを受けても、あいまいに済ませることができたかもしれない。テキストや写真については著作権に関する意識を高く持っていた企業であっても、デザインについては権利意識が薄かったのではないだろうか。

 しかし今後は、もしも類似のデザインが意匠登録されていれば、これを盾に訴えを起こされる可能性も十分にある。特許庁のホームページで意匠登録がないかを確認して、権利侵害を避けるようにしたい。

 すでにメーカーなど、物品(製品)のデザイン保護に努めてきた企業にとっては、認知度のある権利ともいえるが、今後はIT企業、建設業界などを含めたあらゆる業界関係者が注意を払っていくべきだろう。

(ダイヤモンド編集部 林 恭子)