それでも性風俗店がスカウトマンを重宝する理由
2000年代の半ばから、大阪に限らず、日本全国の大都市の繁華街は相次いで浄化されていった。「いかがわしい店」の新規開店が許されないだけではなく、すでにある店も「営業時間が守れていない」「集客方法が悪い」と、これまでは黙認されていた事実を理由として摘発され、それと同時に、店の周りで生きるキャッチ(客引き)やスカウトへの締め付けも厳しくなっていった。
“大々的な動き”を見せていた赤坂グループへの派手な摘発は、その流れのなかで行なわれたものだった。その後、グループは崩壊。ほかのスカウトグループへの見せしめともなった。
締め付けが厳しくなったといっても、スカウト行為自体はなくなっていない。警察による摘発は定期的に実施されるが、突然一切が消えたわけではないのである。むしろ、摘発が続くことによって「問題を起こさず商売する方法がわかって、安定して仕事ができる」と語る者さえいるのだ。
ほかの犯罪行為もそうかもしれない。締め付けても締め付けてもなくならない。今もスカウトを続ける赤坂は「この仕事(性風俗産業)がある限り、“人材業”はなくなるわけがない」と言う。
例えば、コンビニや本屋の前、あるいは歩道の脇にあるフリーペーパーのラックに置かれる『女のコ向け高収入の仕事・アルバイト情報』と書かれた冊子をご存じだろうか。表紙を一見しただけではいかがわしさなど感じることもないため、気がつかない人も多いかもしれないが、中を覗いてみると8割以上が性風俗店の人材募集の広告で埋まっている。
普段気にも留めない人々は、オシャレな街に溶け込む「女衒(ぜげん)」の存在に気がつくことはない。しかし、それは単に気づいていないだけで、ひとたび目を凝らすと街やインターネットは「女のコを入れる努力」で溢れている。
「きっと、そういうの見て入る子も増えたでしょうね。それでもなんで店はスカウトを求めて、スカウトもリスクを冒して店に女のコを紹介し続けるのか。スカウトの仕事ってね、『入れる』だけじゃない。『続く』ようにするのも仕事のうち。この役割を担うものがほかにはないということでしょうね」
「女のコが店に入っても、出勤が不安定だったり、すぐにほかの店行っちゃったりしますからね。そもそも精神的に不安定なコも多ければ、『ある程度のカネがあれば生活できる』ってやる気がなくなるのもいる。店としては、スカウトバックを払い続けてでも『今日は仕事いかないのか?』『悩みあんのか?』『終わったらご飯行くか?』って、彼女たちのメンタルが安定するようにケアする存在がいるとありがたいんですよ」