上田 麻生太郎内閣で注目されている「衆議院の解散・総選挙」。景気悪化懸念が強まった直近では、「解散総選挙はしばらくない」という見方も強まっていますが、果たしてどうでしょう?

 選挙といえば注目されるのが、各政党が掲げる「マニフェスト」(政権公約)ですね。今回は、このマニフェストについて掘り下げてみたいと思います。竹中さんも国会議員時代は、マニフェストの作成に携わられたんでしょうか?

竹中 そうですね。2003年の総選挙、05年の郵政選挙ではお手伝いをし
ました。03年の選挙以降、マニフェストはどんどん重要視されるようにな
り、一気に定着しましたね。今やその「中身」が、選挙の結果に大きく影響するまでになっています。

上田 なるほど。こういうトレンドは海外でも同じなんでしょうか?

竹中 興味深いことに、実はお隣の韓国は日本からマニフェストを学んだと言われています。現在の李明博大統領は、大統領選挙の際に民間から400人もの専門家を集めてチームを結成してマニフェストを作り、当選したんです。

 そのマニフェストは、薄いパンフレットのようなものではなく、240ページほどもある1冊の本になっています。そのとき参加した主要なメンバーが、現在各省庁の要職についている。つまり、「マニフェストと実際の政策を完全に一致させる」という大胆な試みを実践したんです。

「民主主義のツール」として
一気に普及し始めたマニフェスト

上田 そこまで徹底すれば、政権内の意思疎通が磐石になり、政策をスムーズに運営できそうですね。

竹中 ただし、うまく行っているときはよいですが、うまく行かなくなったら、全面的に責任を負うことになりますよね。責任の所在を明確にするという意味では、非常に徹底していてよい試みでしょうね。

上田 その通りですね。そもそもマニフェストとは、政党が政権をとった場合に、政策に具体的な数値目標、達成期限、財源の根拠などを明記した「政権公約」のことですよね。