人工呼吸器の不足によって世界で多くの人々が亡くなり、医療従事者が不眠不休で献身的な対応をしているときに、金融市場関係者はこの新型コロナウイルス危機後の世界経済の回復経路と、株の買い時を夢中になって議論している。
人道的にどうなのか?と違和感を抱くこともあるが、不謹慎だからといって経済の将来を考察する人が誰もいなければ、それはそれで問題が生じる。そう割り切って以下の議論を進めてみよう。
最近海外では「V字型」回復を信じる人は減り、「ナイキマーク(Swoosh)型」の支持者が増えている。世界経済の悪化は遠からず止まるが、そこからのリカバリーのペースは緩慢で、パンデミック(世界的大流行)前の水準に追い付くのに数年かかるというイメージだ。
リーマンショック前のダウ工業株30種平均のピークは2007年10月だったが、それを追い抜くのに米株式市場は5年5カ月も要した。「ナイキマーク型」を支持する人々はそんなに時間がかかるとは信じたくないようだが、そこはひとえに人の移動の自由がいつ回復されるかに懸かってくるだろう。
米シンクタンクの企業公共政策研究所(AEI)が最近、復興を目指す「ロードマップ」を論文で発表していたので参考にしてみよう。ある州で感染爆発が起こり、「自宅待機」が推奨されている状態を出発点とする。日々の新たな感染者数が減少に転じ、14日間続いたら、「フェーズ1:感染を減速させる」に移行する。
移行後は外出がある程度許容される。しかし、学校やショッピングセンター、レストラン、ジム、博物館等々は閉鎖が維持される。