世界経済ロックダウン
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新型コロナウイルスに対して、欧米各地では厳しいロックダウン(都市封鎖)が講じられている。背景にあるのは、猛烈な勢いで人が死んでいるという悲しすぎる事実だ。ロックダウンで経済を停滞させてでも、感染による死を食い止めようとしている。そのためには、誰がより大きなリスクを抱えているのかにも目を向ける必要がありそうだ。特集『世界経済ロックダウン』#3では、米ハーバード大学公衆衛生大学院のイチロー・カワチ教授(社会疫学)にインタビュー。同氏は「社会的弱者から犠牲になる。彼らへの支援策こそが、新型コロナ対策の肝だ」と訴えている。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 杉本りうこ)

格差が大きいから
NYで大勢が死んでいる

――新型コロナが猛威を振るう米ニューヨーク市では、死亡者の多くが糖尿病や心臓病、ぜんそくといった基礎疾患を持っていました。公衆衛生学の研究では、こういった基礎疾患は貧しい人に特に多いと知られていますね。

 感染症のパンデミック(世界的流行)というのは、社会格差をあらわにする作用があると私は思います。生活に困難を抱える人、経済的弱者といったいわゆる「Low SES」と呼ばれる人々に基礎疾患が多いことは、すでにさまざまな研究で確認されています。そしてこういった人々が最も感染症での死亡リスクが高い。歴史を振り返れば、1918年のインフルエンザのパンデミック(通称スペインかぜ)でも、こういった層に多くの犠牲者が出たことが分かっています。

――ではニューヨークで死者が多いのも、この都市の格差に原因があると言えますか。

 そう考えていいと思います。ニューヨークのように感染が深刻な都市として、南部ルイジアナ州ニューオーリンズも注目されています。この2つの都市はどちらもジニ係数(所得分配の不平等度を示す指標)が高く、全米では最も所得格差が激しい都市に属します。この2都市以外でも、感染の深刻度と格差の激しさはさまざまな地域で一致し続けるんじゃないでしょうか。

 詳しい調査はパンデミックが収まった後になりますが、データを解析すれば、新型コロナの感染・死亡リスクが格差によって見事に階層化しているはずです。私は直感としてそう考えています。ですからジニ係数はこれから、新型コロナがその地域で深刻化するかどうかを考えるリスク指標とみてよいのではないでしょうか。