エドワード・リー
コロナ禍で職を失った米国の外食関係者を救うために立ち上がった、南部ケンタッキー州ルイビルに店を構えるシェフ、エドワード・リー氏 Photo by Jolea Brown

「これほどひどいことはなかった」
レストランオーナーの苦汁の決断

「9.11のテロのときより10倍はひどい。こんなに長い間、先の見えない状態が続くのは人生で初めてだ」

 シェフのエドワード・リーは、自身のキッチンでそうつぶやいた。

 彼のレストラン「610マグノリア」は、南部ケンタッキー州ルイビルの旧市街にある。米国南部の伝統料理とアジアのテイスト、さらにニューヨーク修業時代に培った技をミックスした彼の創作料理は人気で、予約も常にいっぱいだった。

 だが、3月15日の日曜日のディナー営業を最後に、全てが激変した。新型コロナ蔓延防止のため、ケンタッキー州政府から「テイクアウトを除くレストランやバーの営業を禁止する」という命令が出されたのだ。

 これにより、3月16日以降、店内でお客が食事をすることが不可能になった。同時に多くの州で自宅待機命令が出され、街から人通りが消えた。

 この事態は、高級コース料理が売りの彼の店にとって、死刑宣告に等しい。リーは、ルイビルとワシントンDCにある計5軒の自分のレストランで働く総勢300人以上の従業員を、オーナーとして解雇しなければならなかった。

 苦渋の決断を下しながら彼の頭に浮かんだのは、「職を失った彼らをこの先、どうやったら飢えさせないで済むか」ということだった。リーはこう語った。

「たとえ失業保険をすぐに申請したとしても、失業手当の小切手が彼らの手元に実際に届くには、最低2週間から3週間かかる。その間、食べるものがない、現金が全く入ってこない、生活に必要なものが買えない――そんな緊急事態を何とかしなければと思った」

 失業したのは、彼の店のスタッフだけではない。全米のほとんどの州でレストラン営業禁止命令が出ており、すさまじい数のレストラン従業員がすでに解雇されている。4月1日現在、米国の失業保険申請者は1000万人を突破した。そのうち多くがレストラン従事者だ。