性別違和の「逆転夫婦」には終わりのない「地獄の苦しみ」があるようです…。
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「女の喜びを知らないくせに」
挑発に乗り、結婚・妊娠してみた

 路夫さん(仮名・49歳)と麻耶さん(仮名・51歳)は“逆転夫婦”だ。路夫さんは女性として生まれ、20代後半から男性として生き、10年前から数度にわたる手術を経て心身ともに男性になった。麻耶さんは男性として生まれ、20歳を前に女性としてしか生きられない自分を自覚し、30歳目前で性別適合手術を受けて女性になった。

 2人の人生で共通しているのは、お互いと出会うまでの孤独さかもしれない。物心がついたころから感じていた「自己の性に対する違和感」を否定せずに受け入れ、応援してくれる人はそれなりにいたが、「同じ」と思える相手は、お互いが初めてだったという。

 特に、自分の違和感が「性同一性障害」と呼ばれるもので、同じような違和感を持っている人間が少なからず世の中に存在することを知るまでは地獄だった。

「高校生の頃、家族にだけは打ち明けようと、何度か考えたことがありました。でも、女装したタレントを弟が、『こいつ気持ち悪い』と笑いながら蔑(さげす)んでいるのを聞いてやめました。軽蔑されるに違いないと思ったからです」

 そう振り返る麻耶さん。色白で二重瞼(まぶた)の大きな目をした彼女は涙もろい。もう30年以上も前のことなのに、思い出すときはいつも悔しさと悲しさに言葉をつまらせてしまう。