一見どういう人が給付の対象なのかイメージしにくいが、具体的に考えてみると相当に所得が低い人である。突き詰めると、「派遣労働者」や「アルバイトで暮らすフリーター」ということになる。「生活保護を受けていないギリギリの層」ともいえる。これは、自民党の支持率が低い層だ。むしろ「共産党」か「れいわ新選組」を支持する層が30万円の給付対象だったのではないだろうか。

 現金30万円給付は、岸田文雄・自民党政調会長と財務省が取りまとめたものだ。「公明党が言えば、ひっくり返すというのはどういうことか」「党は政府の下請けではない」「岸田氏は終わりだ」などと、自民党内からは岸田政調会長への批判が噴出。メンツは丸つぶれとなり、「ポスト安倍」としての力量不足と酷評されるありさまだ(第193回・P2)。

 しかし、見方を変えれば、岸田政調会長と財務省は、現金給付を「生真面目に」考えたといえるのではないか。必要ではない人に現金が渡らないよう、できる限り公平な基準で現金をもらえる人を決めるように、さまざまなケースを試算。最終的に出てきたものが「2つの要件による30万円の現金給付」だったのだろう。

 結果的に国民の不満が噴出し、撤回に追い込まれた。岸田政調会長の大局観のなさ、政治的センスのなさは酷評されても仕方がない。だが、少なくとも、これが「大衆迎合的」ではなかったということだけは指摘しておきたい。

 国民から、安倍首相の「不誠実さ」に批判が集中している折である(第233回)。今後、次の首相には「生真面目な人がいい」という声が案外出てくるかもしれない。岸田政調会長は肩を落とさないように願いたい。

 一方、「一律10万円の現金給付」は必要だと思うが、これは「大衆迎合」の極みであるのは明らかだ。自民党は伝統的に「自助」の考え方に立ってきた。国民への直接的な援助よりも「国民が仕事をして稼ぐことで自立できる」ことを目指してきた(第122回)。今回は緊急事態だったとはいえ、自民党が「一線を越えて」一律の現金給付に踏み切ったことの意味は、長期的にみれば小さくないのかもしれない。