野田内閣のもとで、消費税率の引き上げが決まったことは、素直に評価したい。党の分裂や次期総選挙での敗北の可能性も辞さず、ひたすら増税に向けて一歩一歩進めていった総理の手腕は、今後の歴史の評価に耐えるものといえよう。

 あわせて、忘れてならないのは、一体改革の道筋を作り上げた政治家・与謝野馨氏に対する評価である。

 今回の決定で、10年代半ばまでのプライマリー赤字(基礎的財政収支)の半減という政府目標の達成に向けてめどがつき、国際社会に対するわが国の信用も損なわれずに済んだ。市場もほっと一息というところではなかろうか。

 しかし、今回の決定が、財政再建という具体的な成果に結び付いていくには、今後さまざまな試練を乗り越えていかなければならない。これからが正念場といってもよい。

平成24年度の補正予算は
究極のばらまきの恐れ

 先ごろ平成25(2013)年度予算の概算要求基準が閣議決定され、マスコミの注目を浴びているが、警戒すべきは平成24(2012)年度補正予算編成である。

 政府としては、消費税率引き上げの前にはデフレ経済を脱却しておく必要がある。政治家も次期総選挙に向けて、さまざまな支援業界団体にいい顔をしておきたい。つまり、24年度補正予算は、究極のばらまきになる可能性がある。すでに永田町・霞が関では、本来借金の返済・財政再建に充てるべき23(2011)年度予算の自然増収を財源にした、大規模の補正予算編成が語られつつある。