コロナ禍「史上最大の経済対策」の後遺症、赤字国債で支えた“国費の無駄遣い”見直しへPhoto:PIXTA
*本記事はきんざいOnlineからの転載です。

 政府は、基金の見直しを決定した。多少の改善ではあるものの、根本的な解決策ではない。基金は使い勝手は良い半面、財政民主主義にもとるものである。最大の問題は、経済対策の規模がまず決まり、帳尻合わせとして基金が使われていることである。基金の財政資金を有効活用するために「基金に関する基本法」(基金法)の制定を提案したい。

基金制度のどこが問題なのか

 政府の行政改革推進会議は4月22日、国費の無駄遣いが指摘される基金の見直しを決定した。決定した内容は、200基金事業のうち8割に関する新規予算を措置する際の検証や11事業の廃止(ほかに2023年度に4事業廃止)、5,466億円の国庫返納(うち23年度が4,342億円)などである。

 基金は国が独立行政法人や公益法人、地方公共団体に対して補助金などを交付し、これを原資として特定の目的に充てるために他と区分して保有される資金である。国から独立した組織に対して資金を積み立てて複数年度で取り崩して事業を実施するため、弾力的に財政支出ができる。大規模な財政需要に迅速に対応できる半面、毎年度の国会議決が必要とされずに財政民主主義の“例外”とされる。所管省庁の目が行き届きにくく、財政当局や国会の行政監視のチェックを働かせづらいのが現状である。

 コロナ禍において新たな基金の設置が相次ぎ、これまでとは桁違いの規模で予算が追加されてきた。昨年11月に成立した23年度補正予算では基金に対して4兆3,000億円の予算が支出された。新規に宇宙戦略基金やGIGAスクール構想加速化基金など四つの基金が設置され、既存の27基金が積み増しされた。22年度第2次補正では8兆9,000億円が計上され、安定供給確保支援基金や大学・高専成長分野転換支援基金など16基金の新規設置と既存の34基金への積み増しが行われた。

 新型コロナウイルス感染の急拡大は20年春頃である。それ以前から基金事業として漁業者の減収補填や肝炎ウイルス感染者への給付金を支給するために一定の予算は計上していたものの、当初と補正を合わせてもせいぜい1兆円程度の規模だった。

 コロナ禍では、20年度から23年度にかけてそれぞれ8兆3,000億円、4兆4,000億円、10兆6,000億円、5兆3,000億円と桁違いに膨れ上がっている(図表1)。24年度一般会計の公共事業関係費6兆円、文教・科学振興費5兆4,000億円を上回る予算が基金予算として支出されている現状は、「矩(のり)を超えた」財政運営と言わざるを得ない。しかし、現実の運用が示す最大の問題は、基金設置の目的が本末転倒していることにある。