感染者が急増して支持率が下落していた3月3日の閣議では、文大統領は、「マスクを早急に、かつ十分に供給することができず、国民に大変申し訳なく思う」と、素直に謝罪することも忘れなかった。

 活発な行動力で知られる文氏の金正淑夫人も、ほとんど公開の活動を行わなかった。市民が久々に夫人を目撃したのは、総選挙の投票に現れた時ぐらいだった。

 存在感を示しながらも外出自粛などで不自由な国民に合わせ、派手なパフォーマンスは控えるといったメリハリを巧みにつけたわけだ。

 結果的には、「学校一斉休校」や「国民へのマスク配布」を唐突に言い出したり、緊急事態宣言や緊急経済対策を短期間に修正したりするなど、指導力の発揮が空回りしている安倍首相や、外出自粛のもとで知人らとの“花見”などが批判を浴びている昭恵夫人とは全く逆の対応をしていたことになる。

 安倍首相が新型コロナ問題に不真面目という意味ではないが、文大統領の方が危機管理策としてより緻密に考えて行動してきたといえる。

「長期政権」の声も出るが
与野党とも次期大統領選は見通せず

 文大統領の支持率は50%を超え、与党の空前の大勝利に大きく貢献したことで、韓国内では早くも「日本の自民党のような長期政権が視野に入ってきた」という声すら漏れる。

 支持率急落で瀕死の状態だった数カ月前とは、事態は大きく変わった。

 ただ選挙結果を分析すれば、それほど単純でもない。例えば、比例区で与党の衛星政党である「共に市民党」の得票率は33.35%で、野党の衛星政党である未来韓国党の33.84%を下回っている。

 与党が圧勝した原因は、中間・無党派層が多いソウルと京畿道の首都圏で大勝利を収めたからだが、中間・無党派層がすべて投票所に足を運んだかといえばそうでもない。

 今回の投票率(暫定値)は66.2%で、1992年総選挙以来の高水準だったが、総選挙と大統領選挙を単純に比べるわけにはいかない。

 大統領選の投票率を見た場合、前回の2017年が77.2%、前々回が75.8%だった。

 当時、野党だった李明博候補の独走で興味が薄れ、史上最低の投票率となった07年大統領選ですら、63.0%だった。しかも、盧武鉉政権下で行われたこの大統領選は、進歩系与党が過半数を占めていたのに惨敗するという結果を招いた。

 野党関係者は「総選挙と大統領選はまったくの別物。投票率ひとつで結果は大きく変わる。保守と進歩の地盤に大きな差はない」と語る。

 ただ、与野党を問わず、ポスト文大統領の決まった有力候補がいるというわけでもない。