新型コロナウイルスの感染防止のため、政府は国民に「密集」「密閉」「密接」の“3密”を避けるよう呼び掛けている。緊急事態宣言が全国に拡大し、全国民へ「不要不急の外出自粛」が強く要請される中、今後休業要請が強化される可能性が高いのがパチンコ店だ。しかし、パチンコ店の一部は休業を渋り、来店客も“3密”度外視で店舗に殺到している。この現象の原因は、パチンコ店を取り巻く環境変化と、来店客の3割を占めるギャンブル依存症にある。このままパチンコ店を一斉休業させることになると、いったい何が起こるのか。パチンコ店と来店客の2つの側面から解説する。(信金中央金庫 信用金庫部 上席審議役 佐々木城夛)
「3密禁止」でも大行列!
パチンコ店での感染リスクが問題に
茨城・奈良県内などのパチンコ店への他県ナンバーの自動車による“越境来店”ぶりが大手新聞でも報道されるなど、パチンコ店を取り巻く状況が何かと騒がしい。
私自身も、安倍晋三首相から戦後初の緊急事態宣言が発令された翌朝の10時前に、中野駅近くのパチンコ店で入店を待つ長い行列を目撃し驚いた。既に、都内では大手パチンコチェーンの多くが自主休業していたため、普段は他店に通っていた層もこのパチンコ店に流れてきた可能性もある。
一方で、前方に並ぶ来店客の多くが、早朝に並んだ客にのみ配られる「遊技台確保券」を手にもしており、開店前の行列が常態化しているようにも見えた。
なぜパチンコ店は休業を渋り、来店客は“3密”度外視で殺到するのか。背景には、パチンコ店と来店客の双方が抱える事情があった。
工事費の自己負担、来店者減、困難な資金調達…
禁煙化でパチンコ店を襲う3つの脅威
まずは、パチンコ店を取り巻く状況から整理しよう。
パチンコ店は今、3つの脅威にさらされ、窮地に立たされている。そのきっかけとなったのが、4月1日に全面施行された改正健康増進法だ。これは望まない受動喫煙の防止を目的とした法律である。今回の改正で屋内型施設の禁煙化が定められ、パチンコ店内は加熱式たばこを含め原則禁煙となった。
よって、営業を続けるためにはパチンコ店側が費用を負担して店内を禁煙仕様に変更しなければならない。「禁煙化工事のための資金負担」が1つ目の脅威である。実際、今月1日の施行に合わせて多くのパチンコ店が改修工事を余儀なくされた。今後、パチンコ店はこの工事費用を回収するため、営業を続けなければならない。