世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルスだが、北朝鮮は「感染者ゼロ」を主張する稀有な国だ。確かに、北朝鮮の新型コロナ対応は、諸外国と比べると異様ともいえる素早さだった。しかし、さすがに「ゼロ」は怪しい。ツッコミどころ満載の主張を、アメリカなど世界各国が問題視しないのはなぜなのだろうか?

北朝鮮のコロナ対策が
「異様に早かった」理由

平壌の街並み現在、平壌では外出制限は行われていないが、外出時のマスク着用は必須状態 Photo by San Miguel Chikuzen(以下同)

 全世界での感染者が100万人を超え、さらに猛威を振るう新型コロナウイルス。その中で、「感染者がいまだにゼロ」と主張している国がある。そう、北朝鮮である。感染者を示す世界地図を見ると、北朝鮮だけ白地図状態が続いている。

 北朝鮮では、「朝鮮中央テレビ」のトップニュース扱いで、新型コロナウイルスの世界での感染状況などを伝えている。特に時間を割いているのが、感染対策と今回の新型コロナがどのような環境で感染するか、どの年代がより注意しないといけないかなどの解説。北朝鮮ウオッチャーからは、「安倍首相の説明より具体的だ…」という声が上がるくらいだ。

 そんな新型コロナ対策を国内へ盛んにアピールする北朝鮮は、中国・武漢が封鎖される前日の1月22日に、外国人観光客の入国全面停止を発表し、即日実施。その後は、帰国する北朝鮮人や商用往来者のために10日間ほど、国際列車、空路定期便を運行していたが、2月1日までにすべて運行を停止している。

 日本でも、発生国である中国でもそれほど警戒されていなかった1月22日に、北朝鮮が突然、事実上の鎖国へ踏み切った日の前日は、北朝鮮と隣接する中国の遼寧省大連で新型コロナウイルス感染者1号が確認された日だった。直接国境を接する丹東などではまだ感染者が確認されていないタイミングでの、異様ともいえる早い対応だった。

 北朝鮮は中国官製の感染者情報が信用できないと思っていたのか、または、北朝鮮当局が今回の新型コロナが、自然発生したものではない、特殊なものとの事前情報を持っていたなどの憶測も流れている。