日本航空(JAL)が4月末に発表した2020年3月期決算において、業界内外に驚きを与えたのが手元資金の状況だ。20年3月末時点の額が、わずかとはいえ19年12月末時点よりも上回っていたのである。コロナ危機により、同第4四半期は12年の再上場以来、初の四半期赤字となった。にもかかわらず、なぜ手元資金の水準を維持できたのか。そのカラクリを解き明かす。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)
3月末までに577億円を調達
「現預金の水準をきちんと維持した」
新型コロナウイルスの感染拡大は企業経営に大きな打撃を与えており、多くの企業が手元資金の確保に駆けずり回っている。中でも航空業界は、コロナ危機の影響が旅客需要の激減というかたちで即座に表れ、海外大手では破綻や破綻危機に陥るところも出てきた。
売り上げがなくても、航空機材や人件費などの固定費は容赦なく出ていくため、手元資金の流出が止まらない。資金繰りがつかなくなれば、経営は破綻する。航空各社は目下、手元流動性の確保が経営の最重要テーマとなっている。
国内2強について手元資金(現預金、短期有価証券)の状況を見ると、ANAホールディングス(以下、ANA)は19年12月末時点で3901億円だったものが、20年3月末は2386億円となり、約1500億円も減少した。ところがである。日本航空(JAL)は、20年3月末で3291億円と、19年12月末の3264億円をわずかながら上回った。
JALの菊山英樹代表取締役専務執行役員は、決算発表の席で「(20年3月期)第3四半期末から第4四半期末で現預金の水準をきちんと維持した」とし、コロナの影響が顕在化してから3月末までに577億円を資金調達したことを明かした。さらに4月に入ってからも465億円の調達が行われた。
ANAも決算発表で9500億円規模の資金調達にめどがついてきたことを明らかにしているが、なぜJALは早々に資金調達して手元資金の水準を維持できたのか。
そのカラクリは、調達の内訳から解き明かせる。