アマビエ,ヨゲンノトリアマビエ(左)とヨゲンノトリ。疫病を予言する妖怪ではないが、実際にコロナ収束が近いのではないかという明るい見立てもある(写真はイメージです) Photo:PIXTA

江戸時代の妖怪「アマビエ」が
全国的なブームになった本当の理由

 日本全国で「アマビエ」がブームになっています。江戸時代の熊本の海に出現したという伝承のある妖怪で、人魚のような外見ですが、くちばしがあるのが特徴です。その姿を絵に描いて流布すると疫病がやむという伝説から、新型コロナが拡大し始めたころから、全国的な人気者になりました。

 4月に緊急事態宣言が出されると、厚生労働省はアマビエをSNSでの啓発キャラクターに起用して、外出自粛を呼びかけるようになりました。

 今どれくらい全国的に人気なのか、ネットで検索してみただけでもそれがわかります。鹿児島では小学校の保護者有志が校庭にアマビエの地上絵を描いた、岩手県では南部鉄器の置物がつくられた、徳島県では純米酒のラベルになった、愛媛県では窯元が瓦置物を制作したというように、どの地方でもアマビエでコロナを退散させようと盛り上がっています。

 アマビエに続けというわけではありませんが、「ヨゲンノトリ」なるものも話題になり始めています。幕末の山梨県に出現してコレラの流行を予言したといわれる白と黒の双頭の鳥で、こちらもキャラクターとして人気が広まる動きがあります。

 それにしても、江戸時代の疫病についての伝承であるアマビエが、科学全盛のこの世の中で、なぜこれだけ流行するのでしょう。

 理由の1つは、アマビエ伝承が現代のIT環境にぴったりと合致していたことです。伝承では、江戸後期の肥後の国の海に出現したアマビエが、「これから先に疫病が流行する」と予言をしたうえで、「疫病を終息させるためには、自分の姿を絵に描いて広めるように」と対策を伝えたと言われています。

 この伝承によるコロナ対策(?)は、インスタグラムやツイッターにイラストを上げて拡散させるという、現代の社会環境にぴったり合致していたので、多くのイラストレーターがそれに倣って、アマビエの画像をアップする現象がおきました。