夢は現状打破の端緒となる以外にも、人生の危機に対して備えさせる役割を果たすことも(写真はイメージです) Photo:PIXTA

睡眠と夢の研究史をひもとき
我々の夜の旅の意味と効能を考察

 まさかなるべく家に引きこもってろと叫ばれる時代が到来するとは思わなかった。評者はどちらかと言えばインドア人間なのでそこまで苦ではないが、あちこち出かけて買い物したり映画を観たり飲み歩いたりするのが楽しみな人にとってはつらい日々だと想像する。このうえ毎日暗いニュースばかり流れてくるし、世界も日本も自分の生活もどう変容していくかわからないし、気が滅入る一方である。

『夢の正体 夜の旅を科学する』書影
『夢の正体 夜の旅を科学する』 アリスロブ著 川添節子訳 早川書房刊 2530円(税込)

 そんな、自宅で余暇をどう過ごすか悩んでいる人もそうでない人もこの際ゆっくり分析してみてほしい娯楽(?)がある。夢である。将来の夢ではなく、寝ている時に見る夢のほうだ。

 本書『夢の正体 夜の旅を科学する』は、睡眠と夢の研究史をひもとき、我々の夜の旅の意味と効能を考察し、現実世界も豊かにせんとするポピュラー・サイエンス本である。著者はオックスフォード大学で考古学と人類学を専攻したジャーナリスト。あるとき、発掘調査で訪れたペルーの村で、友人から借りた怪しい自己啓発書に書かれていたとおりの明晰夢を見、夢の世界に魅惑されていったそうだ。……こう書くと眉に唾つけて読んだほうが良さそうに感じるかもしれないが、内容はいたって真面目なので、ご安心いただきたい。