昨年の秋頃にニトリが発売した「重い毛布」。発売以来、売り切れが続出した大ヒット商品だ。ネットでは、「重い毛布を使ったら翌朝スッキリ起きられた」「夜中に一度も目が覚めないほど熟睡できた」など、掛け布団を重くしたことが快眠につながる旨のコメントが多数散見されたが、実際に掛け布団の重量は睡眠の質を左右するのか。上級睡眠健康指導士の加賀照虎さんに真相を聞いた。(清談社 ますだポム子)
「重い掛け布団」の効果は
多数の研究で実証済み
上級睡眠健康指導士で、寝具にも精通する加賀照虎さんは、「掛け布団の重さが睡眠の質を左右する事実は、多数の研究で報告されています」と語る。
「クーリー・ディキンソン病院では、32人の大人に13.6キロの重さのブランケットを使って寝てもらい、どう感じるかという実験を行いました。結果は、33%の人がリラックスし、63%の人が使用後の不安感が減少、78%もの人が『落ち着いたと感じた』と話したのです。重量があるブランケットは、不安感やストレスを減らし、リラックス効果をもたらします。つまり、睡眠の質が上がる状態を作り出してくれるのです」
また、不眠症の人を対象に行われた実験では、こんな結果が出たという。
「スウェーデンの睡眠研究所で行った実験では、1週間今まで通りの寝具で寝てもらい、その後2週間重い掛け布団を使用。その後、再び今まで通りの寝具を1週間使ってもらって、寝具の違いが、睡眠にどんな違いを及ぼすのかを検証しました。対象となったのは、入眠困難や中途覚醒などの不眠症の症状を持つ、20~66歳の男女33人。そのうち、重い掛け布団を使用していた2週間のほうが、『落ち着いて眠れたと感じた』と答えた人が多かったそうです。さらに、客観的にも、寝付きが良くなって中途覚醒が減り、睡眠時間が延びたという結果が報告されています」
寝返りを打ちやすい硬さのマットレスや、身体が疲れにくい形状の枕など、睡眠をサポートしてくれる寝具は数多く存在する。だが、「睡眠の質」が変化するというデータがここまで多方面から出ている寝具は、「重い掛け布団」のみなのだ。つまり、数万円する高級マットレスも、他の特性では違いが出るものの、「睡眠の質」に関しては、向上するというデータはないそうだ。