5月に緊急事態宣言の延長が決まったことで、交通事業者はさらなる厳しい経営を迫られることになった。地方鉄道やバス、タクシーなどの中小交通事業者の中には、すでに事業継続が困難な状況になりつつあるところもあり、早急な対応が必要だ。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
バスやタクシーは
生死の瀬戸際
鉄道、バス、タクシーなど全国の交通事業者や研究者らで構成する「くらしの足をみんなで考える全国フォーラム実行委員会」は4月24日、「くらしの足をなくさない!緊急フォーラム―新型コロナウイルスによる交通崩壊を止めろ―」というタイトルのフォーラムをオンライン開催した。
新型コロナウイルスの影響で新幹線の乗客が激減したというニュースを聞いたことはあるが、いきなり「交通崩壊」とは大げさだと感じる読者は多いかもしれない。
実際、ニュースで取り上げられる交通関係の話題のほとんどが、JRや大手私鉄についてのものであり、これらに関しては、「交通崩壊」とまで言える状況ではないだろう。
だが、あまりニュースとして報じられることのないバスやタクシーなど地域の公共交通は、今や生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされている。
公共交通は、社会機能・都市機能の維持に必要不可欠な要員(エッセンシャルワーカー)の移動を支えると同時に、買い物や通院など最低限の日常生活を送るために欠かせない足であり、混雑の発生を防止する観点からも、安易に減便や運休をすることはできない。
しかし、新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛要請の影響で、公共交通の利用者は大幅に減少。一方でマスクや消毒液など感染防止対策の経費負担は増加している。
こうした板挟みともいえる事態が長期化すれば、元々経営体力の余力に乏しい地方中小公共交通事業者が経営危機を迎えることは確実である。