先進国の中で、コロナ危機が終息するのは日本が最後になるのではないか──。そんな見方が産業界で広がりつつある。当初はサプライチェーンの寸断を理由に生産停止していた国内乗用車メーカーも、国内外の大幅な需要減を理由に生産調整へ走るようになっている。『日本企業、緊急事態宣言』の#3では、大減産が必至となった自動車メーカーの苦境に迫った。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)
世界最大市場の中国が「イチ抜け」
ホンダ、トヨタが合わせる照準
日本の緊急事態宣言の効力が発生した4月8日、中国では湖北省武漢市の封鎖措置が解除され、人々の移動が解禁された。新型コロナウイルスの震源地となった地域の封鎖解除は、コロナ感染地獄から中国が「イチ抜け」したことを印象付ける出来事である。
世界をコロナ・パンデミック(世界的な流行)に陥れた中国が、どの国よりも早く「感染者数の伸び率」がピークアウトし、イチ抜けしようとしているのは皮肉なことだ。
すでに日系の自動車・自動車部品メーカーは、中国経済の「V字回復」に照準を合わせている。
武漢市と広州市に主力の生産工場(それぞれ年産60万台)を持つホンダはその代表格である。3月11日から武漢市にある生産工場の稼働をほそぼそと始めており、封鎖を終えた4月からはコロナ発生前の通常稼働へと切り替えてゆく方針だ。すでに、広州市へは、一時帰国していた日本人駐在員を配置に戻し始めている。
実際に、2月に蒸発した需要は回復傾向にある。ホンダの3月の中国販売台数(小売りベース)は前年同月比50.8%減の6万0441台となった。まだ平時の半分のレベルではあるが、2月の同85.1%減に比べれば飛躍的に改善したといえるだろう。
ライバルのトヨタ自動車はホンダに先んじて、2月末には中国国内にある全4工場を稼働させた。歴史的経緯がありホンダや日産自動車に比べて中国攻略が遅れていたトヨタは、近年、中国事業を急拡大させている。今回の工場の早期立ち上げは、ポストコロナの「中国経済の回復」「世界最大の自動車大国の復活」を世界にアピールしたい中国政府の方針に歩調を合わせているかのようだ。
ある自動車部品メーカー幹部も「中国での“感染第二波”を警戒していないわけではない。それでも、米国、欧州、そして日本の需要が大きく落ち込んでおり、頼みの綱は中国しかない」と言い切る。
翻って日本である。中国がコロナ地獄からのイチ抜けを演出したのとは対照的で、いつオーバーシュート(爆発的な患者の増加)が起きてもおかしくない危機的状況に直面している。ある日系自動車メーカー幹部は「少なくとも先進国の中では、コロナの感染拡大が終息するのは日本が最後になるのではないか」と悲観的な見方を示している。