株式市場は人間の
「感情」が動かしている?
株式投資というのは純粋な経済行為である。したがって投資判断をするにあたって大切なのはデータであり、数字である。これはテクニカル分析であろうが、ファンダメンタル分析であろうが同じだ。いわばそうしたデータや数字を使って自分なりに取り得るリスクと期待するリターンを考える、すなわち損得の「勘定」を考えなければならない。
ところが往々にして多くの投資家は「勘定」ではなく「感情」で判断しがちだ。「目先の価格変動に一喜一憂してはいけない」とはよく言われることだが、これはそれほど簡単ではない。人間の感情や意思というのはそれほど強いものではないから、揺れ動くことは避けられないからだ。したがって、株式市場の動きは企業の実態だけではなく、人間が持つ「欲」と「恐怖」が動かすこともあるというのは事実だろう。過去、相場が大きく上がった時も下がった時もそんな人間の感情の動きから眺めてみると、ある程度の傾向が見えてくる。
人間の「欲」が生み出す
「理想買い」と「現実買い」
これは株価が上がる時の話だが、上げ相場には通常、2段階ある。まず何も利益は上がっていないにもかかわらず、ビジネスモデルが人気先行し、株価が上がるケースだ。例えばソフトバンクグループは、2000年前後に驚くような高値を付けた。当時はいわゆるネットバブルといわれた時代で、ソフトバンクGも1995年に設立された米ヤフーに出資したことが大きな利益をもたらした。しかしながら、当時は現在中核となっている携帯電話事業にはまだ乗り出しておらず、実際の企業収益がそれほど大きいわけではなかったが、インターネットの将来性とそこから展開するビジネスを目指してネットワーク作りをする企業の姿勢に多くの人が将来性を強く感じ、投資が集まった。結果、2000年2月に株価は1株19万8000円という史上最高値を付けた。これが、いわゆる「理想買い」という段階である。