今、中国SFがアツい。劉慈欣のSF小説『三体』が世界を席巻中で、3部作である本書の累計発行部数は2100万部。オバマ前大統領やマーク・ザッカーバーグもファンであることを公言している。さらに中国SF映画「流浪の地球」が世界興収760億円を突破した。このように中国SFが世界を席巻している理由と、そこから見える中国の今を、書評家であり、『三体』の翻訳も手がけた大森望氏に聞いた。(清談社 沼澤典史)
常識では考えられない
中国SFの売れ行き
早川書房から2019年7月に邦訳版が刊行された『三体』。その人気ぶりはすさまじく、翻訳SFとしては破格の13万部を突破した。この『三体』は全3部作で、中国では累計2100万部、世界でも800万部を記録している。世界の著名人も愛読していると公言し、日本でも漫画家のかわぐちかいじ、新海誠など多くの著名人の読了報告が相次ぐ。
また、中国SFの勢いはこれだけにとどまらない。19年2月に公開された中国SF映画「流浪地球」が世界760億円超えのメガヒットとなった。こちらも『三体』の著者である劉慈欣の小説が原作。ハリウッド並みのCGを使い、しかもその大半が中国の国内の制作会社によるものであるという点も世界を驚かせた。
このような中国SFの隆盛の始まりを大森氏はこう話す。