韓国国内からこの“事実”の検証をする声が上がったこともあった。

 13年、韓国の世宗(セジョン)大学の朴裕河(パク・ユハ)教授は、慰安婦問題について客観的事実を研究し、『帝国の慰安婦――植民地と記憶の闘い』という本を出版した。日本でも話題になった本で、ご存じの読者諸兄も多いだろう。

 しかし、その内容は正義連が主張する“事実”とは違っていた。挺対協は猛反発。挺対協の反発に呼応するかのように、元慰安婦などが共同生活をする「ナヌムの家」の元慰安婦9名が、自分たちの名誉を棄損したとしてパク・ユハ教授を相手取り、裁判所に提訴したということがあった。

慰安婦問題の解決は正義連の存立基盤を覆す

 正義連がこうした反応を示す理由は、極めて分かりやすい。それは、慰安婦問題が自らのレゾンデートルだからだ。

 そのため正義連は、終始一貫して慰安婦問題の解決を妨害してきた。ユン前理事長は15年の日韓慰安婦合意をめぐって、「合意の前日、記者にばらまいた内容で一方的に知らされた」と述べた。ユン前理事長はさらに、「被害者の意思を吸い上げようとはしない拙速合意」と韓国政府を批判。「被害者への相談が全くなかった。(合意は)解決だと見ることはできない」と主張した。

 しかし、当時の外交部幹部は直接ユン前理事長と会い、事前の合意内容を伝え、日本からの10億円を基に後に設立された「和解・癒やし財団」についての内容も説明したと証言している。

 さらに、元慰安婦のA氏のこんな証言もある。

 A氏は「和解・癒やし財団」から元慰安婦に支払われる予定の1億ウォン(約874万円)を受け取る意思を示したところ、「ユン前理事長から受け取らないよう説得された」というのである。

 ちなみにA氏は、日本が1995年に設立した「女性のためのアジア平和基金(以下“アジア女性基金”)から、元慰安婦に対する200万円の見舞金の支払いを受けたが、受け取ったことが公になった元慰安婦7人は、挺対協などの仲間から裏切り者扱いされたという。だが実際には合計61人の元慰安婦が同基金から見舞金を受け取っていることが明らかになっている。つまり54人はこれを隠していたのだ。

 この実態から分かるのは、挺対協が元慰安婦のために行動していないということである。挺対協及び正義連が慰安婦問題の解決を妨害しなければ、多くの元慰安婦はアジア女性基金から見舞金を受け取り、より早く、良い形でこの問題は解決していたはずだ。

 そもそも韓国政府は、アジア女性基金についての日本政府の事前説明に対し、韓国側の希望を全て満たすものではないが、それなりに努力したものであると評価していた。しかし挺対協の反対で徐々に立場を後退させ、最後は「日本側で勝手に処理してほしい、韓国政府として協力できない」とサジを投げてしまった。

 その背景には挺対協の問題解決を妨害する行為があったことは明白で、朝鮮日報は社説で「市民団体は慰安婦問題解決という全国民的願いを口実に、ある瞬間から『問題解決』より『問題維持』と私欲を満たすことの方により力を入れることになった。女性たちの恨(ハン)は何も解決されていないが、団体の関係者は次々と政界と公職に進出した」(20年5月9日付)とその姿勢を批判している。