上海Photo:Reuters

 全ての住民の外出禁止が疾病対策における空前の世界的実験だったとすれば、その解除もまた然(しか)りだ。

 新型コロナウイルスを研究している科学者らは、ワクチンや集団免疫がない中、欧米のロックダウン(都市封鎖)緩和が感染の第2波、さらには複数の波を引き起こすことがほぼ不可避だと警告している。中国やシンガポール、韓国、イラン、ドイツなど、一部の国で封鎖措置が緩和されつつあるのに伴い、ウイルス感染が再び頭をもたげる兆候も現れている。その度合いもさまざまだ。

 これまでのところ、そうした第2波の新規感染者は少数にとどまっている。だが、科学者は大規模な感染再燃を危ぶみ、冬眠状態の経済活動を呼び覚ますうえで新たな感染という細流が洪水に変わるのを防ぐため、最善策を見極めようと模索している。1918年に始まった「スペイン風邪」のパンデミック(世界的大流行)は第1波より第2波の死者の方が多かった。

 疾病専門家は明確なメッセージを発している。すなわち、政府は感染者を特定する検査を拡大し、接触者を追跡して隔離することで、ウイルスの感染拡大を阻止しなければならない。「検査、追跡、隔離は、いわば疫学における古くからの格言」と語るのは、サセックス大学で健康に関する世界の非常事態を研究するジョシュア・ムーン氏だ。

 感染抑制に寄与した厳格な措置を徐々に緩和することでしか、何が効果的で、何が効果がないのかを理解を深めることはできないと科学者らは主張する。