上海
2020年第1四半期の上海のオフィス空室率は21%(DTZ調べ) Photo by Konatsu Himeda

新型コロナウイルスまん延に早々と区切りをつけた中国だが、人々の生活はコロナ以前の状態には戻っていない。感染リスクはまだ存在すると警戒しているのだろう、誰もがおっかなびっくりの模様眺めだ。新型コロナは中国にどんな「ニューノーマル(新常態)」をもたらそうとしているのだろうか。(ジャーナリスト 姫田小夏)

警戒を解けない上海市民

 上海では5月4日から「ショッピング祭り(五五購物節)」が始まった。上海市政府が打ち出した官民総動員の消費刺激策で、プラットフォーマーのアリババや百貨店の第一八佰伴など多くの小売業態が販促イベントに参加している。

 ショッピング祭りの主要な販促手段は大胆な値引きだ。大手家電量販店やオンライン販売の有名企業が10億~20億元(1元=約15円で150億~300億円)規模のクーポン券配布に乗り出している。ウイルスまん延期に積み上がった商品在庫を吐き出し、欧米に輸出できなくなった商品を国内市場で消費させることで、企業活動の回復を狙う目算だ。

 5日、市内の外資の大手有名企業に勤務する陳さん夫妻(仮名、30代)は、上海の繁華街に買い物に出掛けてアルマーニのバッグを購入した。「ショッピングモールでも半額セールをしていたので、かなりお得な買い物ができました」と話す。

 コロナ禍に区切りをつけた行楽日和の5月だが、陳さん夫妻は「マスクをしていても、どこにウイルスが潜んでいるかわからない」と外出にはなかなか積極的になれなかったと語る。それは上海の多くの人に共通していて、心のどこかで「新型コロナは本当に収束したのか」という気持ちがあるためだ。政府の統計数字(上海市のコロナ死亡者数は5月12日時点でわずか7人)に疑いを持っていることの裏返しでもある。

 陳さん夫妻はいまだに「外出から戻れば衣類はそのまま洗濯機に放り込み、自分も浴室に直行する」という警戒ぶりだ。ショッピング祭りには、こうした“巣ごもり”生活を続ける人々を外出させる狙いもある。いち早く市民が外に出て元の日常を取り戻したかのように振る舞えば、中国としても国際社会に示しがつくからだ。