◎いろいろ思われているだろうな、とやり過ごす

 日常生活では「やってみようと思ったら、やってみるように」と伝え、自分の感情や意欲を「無駄だ、できない」と否定せずに「そのような感情や意欲は自分にあってよいもの」と認めて、素直に行動に移すことの大切さを理解いただきました。

 Aさんは「トイレへ行きたい、と思ったらそのまま行っていいのですか」と聞いてきました。

 私は「行きたいと思ったら素直に行ってよいのです。会議を中座すると出席者はいろいろ思うかもしれません。しかし、他人の心は他人のものです。

『いろいろ思われているのだろうなあ』とあるがままに受容することも大切です。そうしていれば、『他人の前ではこうあるべき』と自分を縛らずに、『今の自分のままやっていればよい』と素直な気持ちで行動してよいと思えるようになります」と伝えました。

◎「すべきでない」の心の縛りを解きましょう

 かつて森田先生(「森田療法」の提唱者)は外出の際、足が弱いために患者が押す乳母車に乗りました。「大の大人がそんなことすべきでない」と周囲から思われたでしょう。しかし、森田先生は、自分の体調を考えて散歩をしてみるという“あるがままの姿”を患者に示しました。

 森田先生には「すべきでない」と自分の心を縛らずに、「やってみようをそのまま発揮する自分であってよい」という自己受容の姿がみられます。一方、他人の感情に対しても「いろいろあってよい」と他者受容の姿もみられます。

◎トイレ後の「議論」にフォーカスを

 さて、Aさんの話に戻ります。

 Aさんにはさらに、「今の自分のままでやっていれば、心は便意にとらわれずに動くものです。会議を中座しても、また戻って議論に集中すれば、心が便意から離れることを実感するはずです」と伝えました。

 Aさんは2週に一度、外来に通院をされました。その度に便意や下痢で困ったこと、またそのようなことが不思議に見られず、助かったことなどを語られます。

「困る時もあるし、またよかったと思うこともある、それがあるがままのAさんなのです」とAさんを受け止め、日常生活では「今のAさんのままでよい」ということを繰り返し伝えていきました。