しかし、先ほどの質問の回答からもわかるように、日本社会にはこのような考え方は浸透していない。「日本の技術力」「勤勉な国民性」が経済を押し上げたという、「勘違い」が学校教育やマスコミ報道によって社会に定着してしまっているのだ。

日本の経済発展にも見られる
「勘違い」の歴史

 実は、これが今の日本経済が低迷している最大の理由でもある。人口が右肩上がりで増え、GDPも順調に成長しているうちは何の問題もないが、人口が減少に転じ、経済が成長しなくなると、この「勘違い」が一気に逆効果となるのだ。

 本来は、人口減少の中でGDPを成長させるには、生産性を高めていくしかないことが明白だ。しかし、とにかく「日本の技術力」「勤勉な国民性」が経済を押し上げたという固定概念が頭にこびりついてしまっているので、生産性向上につがらないことばかりしてしまう。グローバル競争で海外勢に負けている日本の業界・企業には、こうしたケースが目立つ。

 経済を抽象的な理由で説明してきたので、いつまで経っても精神論や非論理的な話に固執してしまうのだ。たとえば、皆さんの周囲にもこのような主張をするビジネスパーソンはいないか。

「日本経済の元気がないのは、今の若者に昔の日本人のようなガッツがないからだ」

「昔の日本人は不眠不休で働いたのに、今はパワハラだ、ブラック企業だと騒ぎすぎる」

「技術者をもっと大切にすれば、日本経済は復活する!」

 こうした「勘違い」の恐ろしいところは、持論を無理に正当化させるため、「日本は特別な国」というさらなる「勘違い」の深みにハマっていく恐れがあることだ。その象徴が、昨今の「労働生産性」に関する議論だ。

 ご存じの方も多いと思うが、日本の生産性はG7の中でも際立って低い。財政状況が悪いギリシャや韓国と同レベルだ。背景にはあるのは、これまた先進国の中でダントツに低い「賃金」である。