そのタイミングで知り合いから声をかけられて、モバイル関係の企業に就職。その就職はアヤノさんを少なからず安心させた。

「嫌がるのは分かっていたので会社に勤めてよ、働いてよ、などということは言えませんでした。家計からの持ち出しにしないという約束は守ってくれていたし。でも、本音はやっぱり……。だから、就職するって聞いたときは素直にうれしかったです。やったー!って」

 夫が無職の状態では、仕事もきっと辞めづらかったに違いない。その後、アキラさんの後押しもあって、アヤノさんは勤めていた会社を辞めた。鬱の大きな原因はやはり職場だったらしく、離職後にずいぶんと体調は回復した。

 現在は、Web広告の仕事に就いているが、処方されていた睡眠薬がなくても眠れるようになり、会社に行くのも楽しくなっているという。

それぞれが
独立している存在

 夫は仕事を辞めパチプロに。その間に妻は鬱になって体調を崩した。

 そう聞いたら、どう思うだろうか。

「夫がクズ。妻を支えていない」と。「子どもがいないなら、そんな夫を見放せばいい」。そう思う人もいるかもしれない。

 しかし、アヤノさんはそんなことは全く考えなかった。

「それぞれが独立している一個人。夫婦だから一緒にいるんじゃなくて、一緒にいたいからいるんです。別に夫がパチプロをやっていても、それが離れる理由にはならなかった」

 仲が良いのは、相手をとにかく喜ばせたいからだ。喜ばせることができるのは、相手のことをよく見て、よく知っているから。どうして相手のことをよく見、よく知ることができるのか。

 答えはとてもシンプルで、好きだからだ。

 最後に、どんなふうに年をとりたいか聞いてみた。

「おじいちゃん、おばあちゃんになっても手をつないで散歩するような夫婦がいい」とアヤノさん。

「周りが聞いたらノロケになりそうなことをずっとしていられる関係でありたいですね。今のままがいちばん」とアキラさん。

 これからもふたりだけの時間はずっと続いていく。