米国の製薬会社は世界大手で知名度も最高だ。その米国を相手に、中国は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防ワクチン開発競争で接戦を繰り広げている。ワクチン開発が成功すれば、命に関わるウイルスとの闘いも、米中の地政学的競争も、即座に力関係が変化するだろう。中国政府は軍や複数の国営企業も巻き込んで膨大な資金を投じ、研究開発(R&D)の加速を阻む規制上の障害を取り除いている。習近平国家主席が中国製ワクチンを世界と共有する決意を表明したことを受け、最有力のワクチン候補が明らかになる前から、国内の製薬会社は増産体制を整え始めた。世界保健機関(WHO)によると、中国の政府と企業は現在、世界各地で実施されているワクチン候補10種のヒト臨床試験のうち、5種に関与している。