ほとんどの飲食店は、緊急事態宣言下でも休業要請対象に入っていなかった。そして労働基準法第26条は、使用者(会社)の責めに帰すべき事由による休業の場合、休業期間中、平均賃金の6割以上の休業手当を払うことを使用者に義務づけている。「その趣旨は、労働者の最低生活を保障することにある」(水町勇一郎『詳解 労働法』東京大学出版会、625ページ)とされる。

 緊急事態宣言で休業するのは不可抗力のようにも思えるが、労働基準法第26条の「使用者(会社)の責に帰すべき事由」は広く、行政の休業要請もないのに会社の判断で休業した場合にはあてはまる。

 先述の際コーポレーションも正社員には休業手当を払っているので、「休業手当を払うべき事態だ」という認識はあるようだ。

 ではなぜ、非正規にだけ休業手当を払おうとしないのか。Iさんたちは会社前の路上で「これは非正規差別だ」と声を上げた。

 飲食店ユニオンの栗原さんは、「非正規のシフトは会社が柔軟に調整できる。シフト減らしと同じだから、休業手当も払わなくていいと考えているのでは」と推察する。

 忙しい季節は週5日勤務だったが、暇な季節は週3日。忙しい日は10時間勤務だけど、暇な日は3時間。月ごとや週ごとにシフトが「調整」され、会社によっては、8時間勤務の予定で出勤させた従業員に「今日は客が少ないから昼で上がって」と指示する。「早帰し」と呼ばれ、その分の時給はカットされる会社が多い。最低賃金に近い時給で働く非正規労働者には、時に、死活問題になる。

 労働条件は事前に明示する必要があり、会社は勝手に変えられない(労基法第15条1項、労働契約法第9条)。

 労働者の合意なくシフトを大きく減らすのは労働法にふれる恐れがあるが、柔軟なシフト調整も早帰しも珍しくない(ただし、オリエンタルランドのように、早帰しの際、賃金の一部を補償している会社もある)。

「シフト減による減収」を補償しない延長線上に、「休業による減収」をほっておく対応もあるのではないか。栗原さんはそう考えている。