マティス氏は、1991年の湾岸戦争では中佐で海兵大隊長、2001年に始まったアフガニスタン攻撃では准将で第1海兵旅団長、2003年からのイラク戦争では少将で第1海兵師団長として猛将ぶりを発揮した。

 だがこうした戦闘の際にも、民間人になるべく被害が及ばないよう部下に注意したといわれる。

 オバマ大統領は2010年8月、マティス氏を中東担当の中央軍司令官に任命したが、イランの核開発を制限するために、米、露、中、英、仏、独の6カ国がイランと合意した「イラン核合意」にマティス氏は反対し、そのため2013年3月に中央軍司令官を解任され、退役した。

 トランプ大統領は「イラン核合意」は、イランが将来、核兵器を開発することを許す結果になる、と反対していたから、マティス大将を無理やり国防長官にした。

 だが2018年12月、マティス氏はトランプ政権がシリアからの米軍撤退を表明したことに反対して辞表を出し、2月末に辞職することを表明した。

 トランプ大統領はそれに怒り1月1日付で国防長官を解任した。辞職を繰り上げるとはトランプ氏らしい無礼な行動だ。

 今回、マティス大将が「トランプ氏は国民の分断に意図的に努力している」などと口を極めて非難したのはそれに対する報復だという見方も米国メディアでは報じられている。

 だが軍を出動させることに異論を唱えたのは、マティス氏だけではない。

 マーク・T・エスパー現国防長官(56)も、6月3日の記者会見で、「私は現役の軍を抗議活動制圧のために使うことを支持しない」と述べ、軍の出動を語って抗議行動をひるませようとするトランプ氏と一線を画す構えを見せた。

 ただトランプ氏はそれには反論しておらず、更迭されていない。

 エスパー氏は陸軍士官学校を卒業し空挺部隊の将校となり、軍から派遣されてハーバード大学の大学院に入って修士となり、2007年に中佐で除隊した。

 軍需企業レイセオンでロビイストとして活動、政府交渉担当副社長となり、2017年に陸軍長官、2019年7月に国防長官となった。

 敏腕のロビイストらしく、軍の投入については「現役」の連邦軍の出動に慎重だが、州兵の投入には反対しておらず抗議活動側にも、トランプ大統領にも憎まれない巧みな発言をしている様子だ。

イラク戦争の長期化
警鐘鳴らしたシンセキ大将

 軍の高官と大統領など政権中枢が対立するのは珍しいことではない。

 クーデターを起こした軍人が政権を握っている国は、今でもエジプト、タイなど結構、多い。

 第2次世界大戦中のドイツでは国防軍の将校グループが1944年7月にアドルフ・ヒトラーを爆殺しようとして失敗した。

 またフランス領だったアルジェリアの独立を認めようとしたドゴール大統領(元帥)は右翼将校たちから何度も命を狙われた。日本の2・26事件などの背後にも軍の将官がいた形跡がある。