ワシントン・ポスト紙が5月31日に発表した世論調査ではトランプ氏支持は43%、民主党の大統領候補のバイデン氏支持は53%。2カ月前の調査では2%の差だったのが10%差になった。

 ロイター通信の調査では抗議デモに対するトランプ氏の対応を支持する人は33%、不支持は56%と大差がある。

 一方、ニューズ・ウィーク誌が6月3日公表した米調査会社「モーニング・コンサルタント」の調査では、「警察とともに軍隊を動員する」ことに賛成が58%、反対は30%だ。軍の投入について共和党支持者の77%が賛成しているだけでなく、民主党支持者の48%も賛成し、無党派層の52%が賛成だ。

 米国の人口の62.2%を占める白人には、「人種差別は良くない」「警察官の扱いは乱暴だ」との“Political Correctness”(政治上の正しさ)の理念と“White Supremacy”(白人至上主義)の潜在的感情が交錯している人々が少なくないようだ。

「建て前」と「本音」の差から生じる「隠れトランプ派」の存在が世論調査にも表れている。

治安への不安あおり
「隠れトランプ」の支持狙う

 米国では3月に新型コロナウイルス感染者が増加し、死者も出始めると銃弾を買う人が店に殺到し、銃の売り上げは3月だけで約200万丁、とニューヨーク・タイムズ紙は報じた。

 米国では私有の銃がすでに3億丁以上、乳幼児まで含めて1人に1丁あるし、銃を持つ人は弾も少しは持っているはずだが、新型コロナ感染症が流行するとさらに銃と弾薬が売れるというのは不可解な現象だ。

 米国では「社会の混乱が起きるのでは」と考えられる状況が生じると、すぐに暴動、略奪、強盗などに備えなくては、と銃砲店に向かうほど恐怖感が潜在しているのだろう。

 トランプ氏にとっては、治安に対する国民の不安が高まれば、暴徒制圧に尽力する政権に人気が集まり、大統領選を前に「隠れトランプ」が増えることが期待できる。

 国民が敵と味方に分裂すれば「岩盤支持層」は一層強化されるから、マティス大将が「トランプ氏は意図的に国民を分断しようと努力してきた」と言うのも一理はある。

 トランプ大統領は国内の新たな「敵」を求めて米国の“Antifa”(反ファシズム)と称される集団をテロ組織に指定するとツイッターで述べた。

 だがアンティファは本部や全国的組織を持たず、トランプ大統領就任後、勢い付いた右翼集団の人種差別的集会などを妨害しようとする各地の小集団の総称で、全国の一連の抗議行動に参加している者もいる。

 時には右翼グループなどと乱闘になることもあるが、法的にも「テロ組織」として取り締まりの対象にはしにくいもののようだ。