新型コロナウイルスの襲来は製薬業界に大きなビジネスチャンスを与えている。だが、製薬会社がこの好機を最大限に利用するか否かという問題には、投資家の評価を超えた複雑な事情がある。米バイオ製薬大手ギリアド・サイエンシズは、同社が開発した抗ウイルス薬レムデシビルの初期製造分を無償提供したが、今後数週間以内には販売価格を設定する公算が大きい。ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)、メルク、ファイザーなどの製薬大手や有望なバイオテクノロジー新興企業もそれぞれ、ワクチン候補を開発中だ。効果が認められた治療薬の開発会社は、理論的には買い手が出せる上限の価格で販売することが可能だ。被害の大きい地域の多くでパンデミック(感染症の世界的大流行)が下火になり始めても、治療薬に対しては膨大な需要がある。安全性と効果が認められたワクチンは、企業や学校が一斉に休業になるリスクを低減し、結果的に経済活動の停滞による多額の損失を防ぐことができるからだ。