「健康にいい」を追い求めて心を壊す…真面目な人ほど陥る“危険な沼”
誰にでも、悩みや不安は尽きないもの。とくに寝る前、ふと嫌な出来事を思い出して眠れなくなることはありませんか。そんなときに心の支えになるのが、『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)。ゲイであることのカミングアウト、パートナーとの死別、うつ病の発症――深い苦しみを経てたどり着いた、自分らしさに裏打ちされた説得力ある言葉の数々。心が沈んだとき、そっと寄り添い、優しい言葉で気持ちを軽くしてくれる“言葉の精神安定剤”。読めばスッと気分が晴れ、今日一日を少しラクに過ごせるはずです。

【精神科医が教える】なぜ「体にいいこと」を必死に探す人ほど不健康なのか?Photo: Adobe Stock

健康になるために心を壊す?

今日のテーマは「ウェルネス強迫」です。聞き慣れない言葉かと思いますが、これは私の造語です。「健康になろうとするあまり、逆に心を壊していないか?」という問題についてお届けしたいと思います。

「ウェルネス」は健康になりたいというポジティブな状態を指しますが、そこに「強迫」という言葉が結びつくとどうなるのか。まずは、この言葉の意味から紐解いていきましょう。

「脅す」ではなく「強く迫る」心理状態

まず、「きょうはく」という言葉について説明します。一般的にニュースなどで聞く「脅迫(脅迫罪)」は、人を脅すことを指しますが、今回お話しするのは医学的な意味での「強迫」です。

これは字の通り、「強く迫る」状態を意味します。何が迫ってくるのかというと、「ある一つの考え方やこだわり」です。これらが頭から離れず、その考えに支配されてしまう状態を指します。

医学的な「強迫性障害」とは?

精神医学には「強迫性障害」という診断名があります。これは不安障害の一つに分類されます。頭の中で一つのことにこだわり続けてしまい(強迫観念)、それに基づいた行動(強迫行為)をやめられず、日常生活に支障が出てしまう病気です。具体的な例としては以下のようなものがあります。

確認行為:鍵をかけたはずなのに、「かけていないかもしれない」という不安が消えず、何度も家に戻って確認してしまう。
不潔恐怖:つり革やドアノブが菌で汚染されていると感じて触れない、あるいはトイレの後に納得いくまで手を洗い続けてしまい、トイレから出られない。

「バカバカしい」「もう十分だ」と頭では分かっていても、不安を打ち消すために行動をやめられないのが特徴です。ここまでのレベルでなくても、特定のこだわりが強く、頭から離れない性格傾向を「強迫性パーソナリティ」と呼ぶこともあります。

情報過多が招く「ウェルネス強迫」

さて、本題の「ウェルネス強迫」です。これは、健康になりたいという思いが強すぎて、「健康でなければならない」「体に悪いことは一切してはいけない」という考えにとらわれ、心が疲弊してしまう状態を指します。

現代は、テレビ、SNS、ネットニュースなどで健康情報が溢れています。「◯◯は健康にいい」「××には発がん性がある」といった情報が次々と流れてきますが、これら全てが真実とは限りません。

科学的根拠の難しさ:論文があると言っても、反対の結果を示す論文も存在することが多く、科学的に「絶対的な事実」と証明するのは非常にハードルが高いことです。
情報の偏り:SNSやメディアは注目を集めるために、情報の鮮度やインパクトを重視しがちです。検証が不十分な情報や、極端なデマが混ざっていることもあります。

こうした情報に振り回され、「テレビでバナナが良いと言っていたからバナナしか食べない」といった極端な行動に走るのは、心の健康を害するリスクがあります。

結局は「当たり前のこと」が一番の健康法

では、どうすればよいのでしょうか。結論を言ってしまうと、本当に確実で健康に良いこととは、「すごく地味でつまらないこと」の積み重ねです。

規則正しい生活を送る
バランスのとれた食事をする
適度な運動をする
お酒を飲みすぎない、タバコを控える

例えば、「特定の栄養素が体にいい」と聞いてそればかり摂取しても、過剰摂取による害が出ることもあります(例:脂溶性ビタミンの蓄積による中毒など)。あれこれと新しい健康情報を必死に集めて実践するよりも、昔から言われている「当たり前の健康習慣」を淡々と続ける人のほうが、結果的に元気だったりするものです。

情報に流されず、心の平穏を大切に

「ウェルネス強迫」に陥って心が疲れてしまっている方は、あえて情報を遮断してみましょう。夜更かしを避ける、甘いものを食べすぎないといった、誰もが知っている「体に良いこと」を、できる範囲で淡々と行うだけで十分です。

あふれる健康情報にパニックにならず、また他人にもそれを強要せず、まずはご自身の心の健康を優先してあげてくださいね。

※本稿は『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)の著者による特別原稿です。