ビジネスホテルの男性路頭に迷う多くのネットカフェ難民を救ったのは、自治体が借り上げたビジネスホテルだった(写真はイメージです) Photo:PIXTA

都の借り上げビジネスホテルを
活用できた自治体の認識とは

 4月7日、東京都を含む7都府県に緊急事態宣言が発令され、東京都だけで4000人とされる多数の「ネットカフェ難民」が、寝泊まりの場を失った。東京都は支援団体の要請に応じ、ビジネスホテルを借り上げて提供したが、当初は500室分しかなかった。量が絶対的に不足していた上、広報や周知の努力が十分ではなかったことも指摘されている。

 しかし自治体にとっては、良好な生活環境を提供する支援をすぐに開始できる可能性につながる。「劣悪な施設しかないけれど、とりあえずそこでガマンしてください」と言う必要はなくなるのだ。

 とはいえ、制度の活用実態は、各自治体によって大きく異なる。ネットカフェにいられなくなった「ネットカフェ難民」が公的支援を得る場合、東京都の「チャレンジネット」、各自治体の生活困窮者自立支援制度の窓口、同じく生活保護制度の窓口のいずれかを訪れることとなる。各自治体に委ねられている2つの制度に関しては、自治体の姿勢が運命を大きく左右することになる。

 東京都内のZ市にいた人々は、おそらく幸運だった。Z市のA福祉事務所では、4月16日から6月9日までの間に、住居喪失者からの約30件の生活保護申請を受け付けている。昨年の同時期と比べると、相談や申請は「体感で約1.5倍程度」ということだ。約30件のうち約20件の人々は、都が借り上げたビジネスホテルに滞在しつつ、生活保護を利用し始めた。そのうち半数は、現在もホテルに滞在している。ホテルを去った人々のほとんどは、生活保護のもとでアパートに入居したり、本人に適した施設に入所したりしている。

 係長のYさん(仮名)は、次のように語る。

「住居喪失というよりも、仕事をなくされたわけです。新型コロナで仕事がなくなり、もともと居たネットカフェなどに居られなくなったわけです」

 認識は、「事実として、災害による被災者」という感じだ。