好調な賃貸住宅市場からは見えない
「東京人口減少」のリスク

 ちなみに人口が増加しないエリアでは、新規の賃貸住宅供給はすべて稼働率悪化に直結してしまう。都区部の賃貸住宅の年間供給は約6万戸で、これはストック全体の3%に相当する。つまり、人口が増えないと3%稼働率が下がることを意味する。ちなみに、リーマンショック後も同様の減少幅になった。

 しかし、こうした「人口減少危機」を説いてもにわかに理解できる人は少ない。なぜなら、現状の賃貸住宅の稼働率が非常に高いからだ。状況悪化には時間がかかるし、景気後退期は加速しながら悪くなっていく。つまり、当初は気づかない人が多いのである。

 これは1980年代後半に始まったバブル経済のときもそうだった。バブル期を象徴するディスコだった「ジュリアナ東京」は、1991年5月に生まれ、1994年8月まで続いた。しかし振り返ると、株価の最高値は1989年12月であったし、総量規制は1990年3月に始まっていたし、バブル崩壊による景気後退は1991年3月から始まっていた。

 今回の緊急経済対策による貸付金の効果で事業者は延命し、失業者が急速には増えない事態になるかもしれない。しかし、その貸付は売り上げが元に戻って初めて返済できるお金になる。資金繰りが苦しい中、売り上げが当分戻りそうにない会社に貸し込むのだから、返せなくなる可能性は当然高い。

 実際、バブル崩壊後に経営者の自殺が急増したのは、1998年の金融危機が契機となった貸しはがしや債権の取り立てによるものが多い。リーマンショックのような急速な悪化ではなく、長期的に経済が低迷する可能性もある。

 遅かれ早かれ悪化する景気なら、事業継続のためにやるべきことは色々ある。その差が、景気が浮揚するまでの数年のキャッシュフローを支えることになる。

(スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント 沖 有人)