モーツァルトの怒り

 映画『アマデウス』の中に、あるオペラを初演した際、モーツァルトが劇場支配人に「ちょっと音が多すぎるから整理してください」と注文を付けられて、「どこを変えろというのですか。1つの音を変えれば、音楽は損なわれ、1つのフレーズを変えればまったく違うものになってしまう!」と激怒するシーンが描かれている。彼がどれだけ自分の「選択」に自信を持ち、それが唯一無二であると信じていたかがわかるエピソードだが、「音楽のサイコロ遊び」はそうした選択の重みを軽視する輩へ向けた彼なりのアンチテーゼなのかもしれない。