個人情報は一切取らない
透明性へのこだわりが採用

――廣瀬さんたちのコミュニティー「COVID-19 Rader JAPAN」以外にも、開発をしている団体がいました。

廣瀬 当初、同時多発的に開発されているとは思っていませんでした。僕は開発の裏側を公開していたので、逆に話を持ち掛けられたことはあったのですが、開発段階から全ての情報をオープンにしていくという僕の信念と合致せず、結果的にバラバラになりました。

――政府が示したアプリの留意点として、「透明性」「インクルーシブネス(包摂性)」「使用目的の限定」「検証」など4つの評価軸があります。それらをクリアできたのが「COVID-19 Rader JAPAN」だったというわけですね。

廣瀬 結果として、私たちのものが日本政府に採用されることになりました。

 実は初期の段階で、医療向けの個人情報を取らないのかという声をかけてきた企業もあったのですが、「一切個人情報を取るつもりはない」とお断りしていました。

 個人情報を取るようなアプリにすれば、企業から支援を得られたかもしれません。しかし、日本でのプライバシーに対する意識は世界的に見ても高いです。また、自分だったら個人情報が吸い上げられるようなアプリは使いたくありません。自分が嫌なものをつくって、世の中にばらまくはずがない。

 そのことをクリアにするために、開発過程から全て一貫してオープンに記録を残しているということが大事なのです。

――政府による監視が始まるのではないかという批判や懐疑的な意見もあります。

廣瀬 「国のアプリをつくりやがって」とか「秘密警察の前触れだ」とか暴言を吐かれたこともあります。行政をテクノロジーが支えるような取り組みは今までになかったと思うので、それをゼロから進めていくのは大変でした。

 私たちはお金を1円ももらわずに、ボランティアで開発しました。たまには、そういう人たちがいるんだと信用してくれたらいいなと思います。