昨年7月の参院選を巡る選挙違反事件は、法相を経験した国会議員夫婦の逮捕に発展した。現職の衆院議員が妻を当選させるため、地元有力者に現金を配って回っていたとされる異例の事件。それぞれの秘書が逮捕・起訴された後も説明責任を果たさず、ダンマリを決め込んだ前法相の河井克行衆院議員(広島3区)と案里参院議員(広島選挙区)だが、公職選挙法違反(買収)容疑での逮捕で概要がほぼ判明した。自民党を離党したものの、議員バッジは着けたまま塀の向こう側に落ちた2人。辞職か失職しない限り、議員報酬は支給され続ける。(事件ジャーナリスト 戸田一法)
影響力で配布した現金に差額
夫妻の逮捕容疑は案里容疑者を当選させるため、共謀して昨年3月下旬~6月中旬ごろ、5人に投票や票の取りまとめを依頼する目的で計170万円の現金を渡した疑い。
また克行容疑者は単独で昨年3月下旬~8月上旬ごろ、91人に対して116回にわたり、計約2400万円の現金を渡した疑いが持たれている。
容疑内容の現金を渡した相手は重複しており、実際に受け取ったとされるのは94人。半数近くが議員や自治体の首長、半分以上が後援会の幹部や地元の有力者だった。
全国紙社会部デスクによると、数回にわたって計100万円以上を受領した人物も複数おり、最高で総額200万円前後とされる。