接触確認アプリ
「接触確認アプリ」を浸透させるカギとは? Photo:Diamond

新型コロナウイルス感染者と濃厚接触した人に通知を送る「接触確認アプリ」が6月19日、厚生労働省からリリースされた。多くの人が使い続けないと意味がないアプリだが、23日17時時点での普及率は約3%。このアプリについて、マイクロソフトやグーグルでエンジニアとして活躍し、現在は複数の企業で技術顧問を務める及川卓也氏は「このアプリの成否には、対コロナというだけでなく、日本社会のITへの信頼が懸かっている」という。コロナ共存時代の日本の技術・データ活用について、及川氏が語る。

接触確認アプリ2つの課題
「運用面の透明性」と「アップデート」

 日本で6月19日に公開された接触確認アプリは、23日17時時点において、iOS、Androidの合計で約392万件ダウンロードされており、ダウンロード数の初速としては好調に思えます。ただ、このアプリはより多くの人に信頼されて、インストールされ、使われ続ける必要があります。また、いざ感染と判定されたり、陽性者との接触が確認されたりしたら、アプリへの登録や、アプリの指示に基づいて関係機関へ連絡するといったアクションをユーザーが取らなければ、意味がありません。

アプリのユーザー体験
(C)及川卓也 2020 禁無断転載
拡大画像表示

 そうした条件を考慮すると、懸念がいくつかあります。ひとつはアプリへの信頼性が下がるような状況です。実は、接触確認アプリのベースとなる部分は、COVID-19 Radarというオープンソースソフトウエアのコミュニティがボランティアで開発を進めていたもの。アップルとグーグルが共同開発した、プライバシーを保ったまま「誰とすれ違ったか」という情報だけを取得する仕組みが5月に公開されたことを受け、そのAPI(アプリケーション・プログラム・インターフェース)を取り入れています。

 このアプリの仕様書やコードは公開されており、開発過程の透明性は高いといえます。今までの日本政府であれば、このようにスピード感を持ってオープンな技術を採用することはほとんどなかったことですので、このこと自体は大変歓迎できることです。

 ただ、今回のアプリの開発にあたっては、オープンソースソフトウエアの成果物がそのままプロダクトの完成品として政府に納品されるようなものではありません。アプリ開発の工程管理や運用はパーソルホールディングスの子会社・パーソルプロセス&テクノロジーが受託して行うことが、6月16日の菅官房長官の記者会見でようやく明らかになりましたが、せっかく透明性を保って、オープンにアプリ開発が進められてきたにもかか わらず、委託先選定の過程に不透明さが残った点は残念に思います。パーソルプロセス&テクノロジーの役割もいまだに明らかにされていません。今になって引き継ぎが行われているという話も聞こえてきていますので、もしかしたら彼らも予想しなかった形で巻き込まれているのかもしれません。