ドイツ決済サービス会社ワイヤーカードの転落劇に先立ち、ソフトバンクとクレディ・スイスは異例の枠組みを通じて、同社に10億ドル(約1060億円)規模の投資を取りまとめていた。この合意に絡む仕組み商品の価値は急落しており、ワイヤーカードの経営危機による打撃を増幅している。
ワイヤーカードは2019年4月、ソフトバンクグループの系列会社が9億ユーロ(1080億円)相当の転換社債を購入するとともに、同社と戦略的提携を結ぶと発表した。
この案件についてソフトバンクに助言を行ったクレディ・スイスは、この転換社債を証券化し、別の投資家に転売した。9月に完了したこの取引は、低迷していたワイヤーカードの株価を押し上げ、不正会計疑惑に揺れていた同社のカンフル剤となった。
だが、ワイヤーカードの株価は先週、再び急落。監査法人が同社のバランスシート上にある20億ドル超の預金が行方不明だと発表したことで、売りが膨らんだ。クレディ・スイスが手掛けた転換社債も確認できなかったという。この転換社債は目下、額面の12%程度で取引されており、これを購入した投資家や欧州のプライベートバンクは厳しい状況に直面している。