キリン,ソフトバンク,物言う株主,アクティビスト写真はイメージです Photo:PIXTA

キリンホールディングス株式会社(以下、「キリン」)とソフトバンクグループ株式会社(以下、「ソフトバンクG」)が今年3月に取った「アクティビスト(物言う株主)」への対照的な対応は、新型コロナ危機がもたらした予想できない変化の中で、日本のコーポレートガバナンス(企業統治)の現状を切り取ったスナップショットのようである。(ニューヨーク州弁護士、外国法事務弁護士 スティーブン・ギブンズ)

株主に優しくない
企業生態系

 安倍政権が行った「株主に優しいコーポレートガバナンス改革」にもかかわらず、日本流資本主義は株主にもエクイティ・ファイナンスにも「優しくない構造」を相変わらず維持している。コーポレートガバナンス・コードはこの国に深く根ざす、株式の持ち合いという企業生態系を破壊することはできず、株主でない「ステークホルダー(会社役員、従業員、債権者、取引先、顧客など)」を株主よりも優遇する姿勢が改まらない。

 アンチ株主の生態系には、アクティビストにとって「魅力的な果実」が育つ。つまり、株価に反映されにくい現預金、不動産、投資有価証券などの、主力事業以外の金融資産が詰まったバランスシートだ。