2%物価目標は、事実上
棚上げされた状態が続く
日本銀行は6月15日、16日に開いた金融政策決定会合で、大方の予想通りに金融政策の現状維持を決めた。他方で、新型コロナ対応である「特別プログラム」の総枠を、従来の75兆円から約110兆円+αへと引き上げた。
この措置は、政府が先日成立した2次補正で、無利子・無担保融資を中心とする特別融資制度の事業規模を28.2兆円と見積もったことを、反映させたものである。
日本銀行の現在の政策の中心は、「企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持」の2つである。前者の企業等の資金繰り支援については、「特別プログラム」のもとで粛々と進めていく。金融市場の安定維持については、金融市場の動向に応じて柔軟に対応することになろう。
足もとで、日本銀行のETFや長期国債の買入れ額が小さくなっているのは、金融市場の不安定化リスクに対する警戒が低下していることの反映であり、金融市場の安定措置についても、一服感が出ているのである。
そうしたなか、2%の物価安定目標の達成は、4月以降、棚上げされた状態にある。また、物価目標と結びついた政策金利の運営の方針(フォワードガイダンス)も、放棄された状態が続いている。
今回の対外公表文でも、消費者物価は当面マイナスで推移するとの見通しが示され、2%の物価安定目標の達成からは距離が遠のく一方である。日本銀行が物価安定という使命(マンデート)に基づくマクロ金融政策の枠組みを再構築するまでには、しばらく時間がかかりそうだ。